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第377話 番外編~和樹ver.~女神との出逢い①

平日の仕事帰りに ‘R’moneに連れて来て貰った。 海とここに来るのも3回目だ。 俺は ’来たいなぁ~’ と思ってたけど、海は「美味しい酒があるし店も上品で良いんだが……」と言って言葉を濁し、なかなか連れて来てくれなかった。 1度目は海と初めて出会った時、2回目は恋人同士になって数週間後に、そして今回は俺の家族に付き合いを認めて貰ったお祝いで、あの日から数日経って「美味い酒が飲みたい‼︎ 和樹、お祝いしよう!」と言われて、今はカウンターに海と一緒に居る。 俺はキョロキョロ…店の中を見て、やはり場違いだなぁ~と思ってたけど……ちょっと来れただけでも嬉しかった。 早い時間帯と言う事もあり、まだお客さんは数組程度だった。 そこにスーっと、マスターに注文してたバーボンとカクテルが目の前に置かれた。 「お久し振りですね。今日は運が良いですよ」 海に向かい小声で話し、チラッと対角線上に居る人を見て目で合図して話す。 海と俺はつられてマスターの目線の先を見た。 入口近くのカウンターの隅で、仲良さそうに話すカップルが居た。 1人は正統派な男らしい端正な顔立ちで如何にもモテそうな感じの人で、海にも負けない程の男前だった。 その隣に、花が咲くように笑ってる人を見て、俺は驚き声も出なかった。 なんて綺麗な人なんだろう。 こんな人が世の中に居るんだ‼︎ モデル⁉︎ 男⁉︎ 男にしては綺麗過ぎる。 「今日は運が良いな。滅多に来ないからな」 隣の海がそう話すと、マスターが俺をチラッと見て和かに微笑み話す。 「でも、もう必要は無さそうですね?」 海は照れた様子で頭を掻き 「そうだな。でも、目の保養にはなる。幸せそうで良かった」 「彼氏の方が夢中でしてね。妬きもち焼きで、ここにも殆ど来ませんが……幸せにしてますよ」 そう話すマスターの笑顔は珍しい。 そして他のお客さんに呼ばれ離れて行った。 「乾杯しよう!」 海に言われ、俺はボーっと見てた自分にハッとしカクテルを手にし海に向き合って乾杯した。 カチンッ! 乾杯し一口飲んで美味しいカクテルに口元が微笑む。 そして気になる事を海に聞いてみた。 「ねえ、海。あの人が前に海が言ってた女神(ヴィーナス)?」 「ああ、1度見たら忘れられない程の美しさだろ?以前は、週末になると現れてた。そして彼氏が出来ると来なくなるんだが付き合っても保って半年周期だっだが、ここ1年ぐらいは全然現れて無かったし、マスターからも本命が出来たと聞いてたが本命の彼氏と一緒に居る所を初めて見た。幸せそうで良かった」 「本当に海の話してた通りだね。あんな人が居るんだね。完璧過ぎて恐れ多い気がする」 海はここの美味しいお酒と落ち着いた雰囲気が好きで仕事が上手くいった時には1人でゆっくり美味しいお酒を飲んでお祝いするのが楽しみの1つと言ってた、それと客層が良いから人脈を広げたり仕事に繋がる話しを聞く事も出来ると言って、俺と付き合ってからは年に数回、美味しいお酒を飲みたい時に来て1杯だけ飲んで帰って来る事もある。 幾ら、品の良い店であってもやはり出会いの場でもあるから心配は心配だったけど……海が自分へのご褒美も兼ねて美味しいお酒を飲む事も楽しみにしてるようだったから ‘行かないで欲しい‘とは言えなかったし、海を信じるしかないと思ってた その時に女神の話しも聞いた。 「そんなに素敵な人が居るなら、何で、海は声を掛けないの?海なら、OKしたんじゃないの?」海がその人目当てでお店に行ってたんじゃないか?と、海に半信半疑で聞いた。 「俺には恐れ多いって言うか.もし恋人になったとしたら、心配で仕事も何もかも手につかないと思う。彼の隣に居る人は、相当な自信家じゃないと無理だろうな。それに俺はどっちかと言うと、そう言う生身の彼より理想的な人と言うか.憧れとか見てるだけで充分だ。和樹も見たら、そう思うよ」 その話を聞いて、海にそこまで言わせるなんて、どんな人だろうと思った。 実際に今日見た彼は本当に現実味がない程に、綺麗で完璧な外見だった。 そして彼氏に微笑み、笑う顔は周りも思わず微笑む程の笑顔だ。 海が話す通り、遠くからでもずっと見て居られる 「おい、和樹! 見惚れてるなよ。気持ちは解るが隣に、俺が居る事も忘れるなよ」 「あっ! ごめん.ごめん。海の話し聞いてた時にはそんな人が本当に居るの?なんて思ってたけど…大袈裟でも何でもなく海が話す通りで驚いてた。本当に、女神って話すのが解るって言うか.天使みたい」 「だろ?彼氏もあの様子ならベタ惚れだな。女神に、和(にこ)やかに話してるが周りを牽制しまくってる。気持ちは解るが大変そうだな。でも、女神が幸せに笑ってて良かった。何だか、応援してた芸能人が変な奴とくっつくのは納得できないがあの彼氏なら大丈夫そうだ!と安心した。例えるなら、そう言う気持ちだな」 「うん、 解る!」 それ程、誰が見てもお似合いの2人だった。 「さてと、もう女神達の話しは終わりだ。俺達のお祝いなんだから、こっちも楽しい話をしよう」 「うん! 海の飲んでるお酒ちょっと飲んでみたいいい?」 「良いけど……甘い酒が好きな和樹には、ちょっときついと思うぞ。舐めるだけにしろよ」 「大丈夫だよ。一口だけ」 海から受け取ったバーボンを一口飲むと、喉から胃にかけてカーっと熱くなった。 「うわぁっ‼︎ きっつい~!」 俺は胸を押さえると、海は背中を摩り笑ってた。 「だから、無理だ!って言ったんだ。こう言うお酒は匂いを楽しみ、この丸い氷を溶かしながらチビチビ…飲むのが良いんだよ。大人の飲み物だな」 「俺だって、大人だよ~」 「最近だと、ビールも苦いって言ってただろ?」 「うん、前はそうでも無かったけど……甘い焼酎やカクテルを飲んでたら……苦く感じて。でも、飲めないわけじゃないから!」 俺がムキになると、俺の頭を撫で 「甘いのでも何でも酒は酒だからな。飲み過ぎるなよ」 「は~い」 「良い子だ」 海が笑うから、俺はつい笑顔になってしまう。 そして女神の事も忘れ、海と会社での話しや俺の家族の話しとたわいもない話しをして美味しいお酒とおつまみを食べ過ごしてた。 甘く強くもなくフルーティーなカクテルを頼み、折角だから、色々な種類をお代わりして俺も徐々に気持ち良くなってた。 1時間程して、女神が俺達の座ってる側を通り過ぎてトイレに向かった。 俺は少し経ってから、後を追うようにトイレに立った。 その時の俺は少し酔ってたのかも知れない。 普段の自分と違って無意識に行動してた。 俺の中で ’近くで女神を見てみたい’ ‘少しだけでも話してみたい’と言う気持ちがあったんだと思う。 綺麗な花に吸い寄せられるように女神の元に向かった。

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