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闇底に沈む光に6

藤堂のマンションを出て、今夜の宿探しの為に繁華街に向かうバスに飛び乗る。 ポケットに手を突っ込んで、郵便受けに放り込むはずだった手紙を取り出した。 今日の予定では、薫の方が先に帰宅するはずだったのだ。薫の車が駐車場に入るのを確認してから、ポストに入れて様子を見るつもりだった。 ……邪魔するなって。 ユウキは、イライラと爪を噛んだ。 冴香からしてみたら、自分の方が邪魔者だろう。でもこうするしか、他に方法はないのだ。 飲み屋が連なるこの市最大の繁華街の入り口でバスを降りた。 金なら久我からの報酬がまるまる残っているが、この辺りの大きな店はヤツの息がかかっている。フラフラしていて見つかると、また余計なお仕事が増えるのだ。 そろそろ看板の灯がつき始めた大通りを避けて、裏路地に足を向ける。複雑に入り組んだ狭い路地を抜けて、一番外れまで来ると、ユウキはさり気なく辺りを見回してから、古い雑居ビルのエントランスに入って行った。 急な階段を3階まであがって、突き当たりの店が目的地だ。 カランコロンとレトロちっくなドアベルを鳴らしながら、木製のドアを開ける。 薄暗い店内には、まだ客は一人もいない。 奥からひょいっと顔を覗かせたこの店のオーナーの宮地が、こちらを見て嫌な顔をした。 「なんだ、おまえかよ」 「ひでえ。そういう顔するなって」 「俺の顔は昔からずっとこんなだよ」 ユウキは首を竦めて苦笑すると 「ねえ、今夜、泊めてよ」 上を指差すと、宮地はますます嫌そうな顔になり 「おまえ泊めてるの、噂になってるんだよ。そのうち怖いのが来る」 「とぼけておけばいいじゃん。もしアイツらが来たら合図してよ。屋上から抜け出すからさ」 宮地はボリボリと頭をかいた。 「久我さんのマンションに帰ればいいだろ」 「やだ。あいつんとこにいたら、身体壊れちゃうもん」 宮地は、はぁ……っとこれみよがしなため息をつくと 「ったく。厄介なの背負い込んじまったな」 「今さらそれ言う?ちゃんとサービスするからさ」 宮地はのろのろと近づいてくると、顎をグイッと掴んできて 「サービスもだが、宿賃も払えよ」 「もちろん。金ならある」 上着の内ポケットをチラッと見せると、宮地は首を竦めて顔を近づけてきた。 タバコくさい口づけに、ユウキは少しだけ眉をしかめる。 タバコの匂いは好きじゃない。 でも、あそこにいるよりは100倍マシだ。

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