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闇底に沈む光に12
朦朧としたまま、郊外の久我の豪邸に運び込まれる。そこからの記憶はハッキリしない。
別の薬を足されて、完全に意識が飛んでいた。
極彩色の眩しい光がグルグルと視界を回っていた。音や声は意味をなさない耳鳴りのようで、時折、自分があげる淫らな声だけが、やたらと鮮明に記憶に残っている。
目が覚めて、一番最初に見えたのは、誰かの白い服だった。
ユウキは鉛のように重い身体をピクリとも動かせずに、ぼんやりとその白を見つめていた。
「目が覚めた?」
白い服の男…(たぶん、男だ)…が、少し低めの柔らかい声で話しかけてくる。少し儚げな、線の細い体つきをした、大きな目が印象的な綺麗な顔立ちの男だ。
全身が気怠くて、目蓋を動かすのも億劫だった。もちろん、声なんか出せそうにない。
「薬の使い過ぎだね。可哀想に」
その後ろから聞こえたもう一人の声には、聞き覚えがある。
でも誰だっただろう。頭がぼーっとして思い出せない。
「このままだと、この子、ダメになる」
「そうだね、時間の問題かな」
「助け出せる?」
「難しいけど……やってみるよ。君が望むなら」
「あの人の、大切な……身内だから」
「わかった。手配してみよう」
男たちの会話を夢うつつに聞きながら、ユウキは耐えきれずに重い目蓋を閉じた。
次に目を覚ますと、意識はだいぶハッキリしていた。鉛が詰まったようだった頭も身体も、スッキリと軽くなっている。
ユウキは、ほう……っとため息をつくと、横たわったままで、ゆっくりと視界を巡らせた。
ここは見慣れた久我の屋敷じゃない。
もっとシンプルな内装の、明るい印象の部屋だ。
部屋の中にはほとんど物がない。まるでモデルルームみたいで、生活感が全くないのだ。
少し、枕から頭をあげてみる。グラつく感じはなかった。ここ最近では一番、頭が軽く感じた。
肘をついて、そろそろと身を起こそうとした時、ドアが開いた。
同時に、いい香りが漂ってきて、鼻をくすぐる。
ユウキは近視だが、今は眼鏡もコンタクトレンズもつけていない。上半身を起こし、目を凝らして、入ってきた人物を見つめた。
「目が覚めたかい?」
同じことを、ちょっと前にも聞かれた気がする。
だが、声が違う。
この声は、斉木という男の声だ。
近づいてくると、ぼやけていた輪郭がハッキリして、記憶の中の顔と目の前の人物が一致した。
「あんたは……斉木……」
「ああ。名前、覚えていてくれたんだね。ユウキくん」
「ここ……どこだよ?」
「私の友人のマンションだよ」
「あんたの……友人……?」
ユウキは顔を顰めた。
状況がいまいちよく分からない。自分は何故、久我の家ではなくここにいるのか。
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