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光射す午後に1

「映画。あんまり面白くなかった?」 冴香の言葉に、薫は手元のカップから視線をあげた。 「いや。どうしてだい?」 「さっきから何か、考え事してる。難しい顔して。また仕事の悩みごと?」 「そうじゃないよ。映画の結末をね、ちょっと考えてたんだ」 冴香は首を竦めて紅茶をひと口啜ると 「パンフレットには、美しき恋の成就ってあったけど、あれはハッピーエンドではないわよね、どう見ても」 「そうだね……単純なハッピーエンドではないな。映像は素晴らしかったけどね」 「あの監督の作品は、映像美には定評があるから。ただ、私にはちょっとラストが重たい気がしたわ」 薫は珈琲をひと口啜った。苦い。 ここは映画館が3階に併設されたショッピングモール内の珈琲専門店だ。映画を観た後、いつもは別のCafeに入るのだが、今日は新しくテナントで入ったこの店に来てみた。 ……失敗だったかな。苦いだけで少しも美味くない。 関東では話題の店で、東北に初上陸と前評判もよかったのだが、期待外れだった。 「たしかに重いな。あの2人には別の選択肢もあった気がするよ」 「そうね。私もそう思う。特に女の子の方がね。私ならあんな風にはならないわ。何が相手の為かなんて分からないもの」 薫は眉をあげてふふっと笑った。 「そうだな。君ならきっと、強引に彼の手を掴んで引きずって行くかもな」 「あら。何それ。私のイメージってそういう感じ?」 冴香は心外そうにちょっと拗ねてみせた。 「怒るなよ。褒め言葉のつもりだ。君は自分に自信があるし、それを裏打ち出来るだけの努力も怠らない。いつも前向きで行動力もある。俺はいつも尊敬しているよ、君を」 冴香は苦笑すると 「同期にはね、可愛げのない女だと影で言われているわ。でも可愛いだけでは好きな仕事はさせてもらえないもの」 「そんな失礼なやつがいるのかい?」 「みんな自分が一番になりたいから。何か粗探しをしてはライバルを蹴落とそうと必死なのよ」 「まあ……そういうのはあるね。どこの世界でも」 冴香はフォークでケーキをつつきながらため息をついた。 「時々、そういうのがすごく面倒くさくなる。バカバカしいなーって。狭い世界で同じ時にたまたま巡り会っただけの人たちと、競ったり争ったり。こんなことの為に、大学で必死に勉強してたのかなぁ…私、って」 薫はカップを置いて手を伸ばした。冴香の手に自分の手を重ねて 「今の職場はキツイかい?ストレス、溜まってるの?」

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