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光射す午後に12

「樹くん。あの子を助けてご家族の元に無事に連れていったら……君はその後どうするの?」 「東京に戻る。もう僕の役目は終わるから」 「せっかくこちらにマンションを買ったのに?」 月城の言葉に、樹は苦笑いした。 「ここは……僕の未練だから。和臣くんの件がなかったら、こちらと向こうを行き来するのに便利かな?って思ってた。でも……やっぱり僕は、ここに居たらいけない」 「何故?君はもう自由の身だ。何処に住むかは自分で選べるんだよ」 樹は月城を見上げてうっすらと微笑むと 「分かっているくせに。貴方は時々、意地悪だ」 月城は樹の手をそっと撫でた。 「分かっているから敢えて聞いたんだよ。君は昔と変わらないんだな。自分を犠牲にしてでも、相手のことを優先する。僕はね、そういう君が、時々ひどく辛くなるよ」 樹は月城から目を逸らし、窓の外を見た。 「和臣くんのことが分かったから、あの人に最後に会う勇気も出た。これでよかったんだ。もう、終わりにしないと」 「それは、君の本心?君はそれで本当にいいのかい?」 樹は月城の手を払い除け、立ち上がった。 「もう、この話はお終い。ちょっと疲れたから、今日は早めに寝る」 樹はゆっくりとリビングのドアに向かい、立ち止まって振り返った。 「月城さんは?泊まっていく?」 「いや。僕はあの人の世話があるからね。そろそろお暇するよ」 樹はぎこちなく頬をゆるめて 「あなただって、人のこと言えない。……おやすみなさい」 くるりと月城に背を向けて、樹はドアを開けてリビングを後にした。 「薫、薫、」 揺さぶられて飛び起きた。 隣を見ると、冴香が心配そうに自分を見つめている。 「あ……あ、ごめん。俺は……うなされてたのか?」 冴香はとんとんっと優しく肩を撫でてきて 「ちょっとね。声がするから……気になって」 薫は、はぁ……っと深く吐息を漏らすと、額に手を当てた。 「ごめん。もう、大丈夫だ。寝てくれ。明日は早いんだろう?」 冴香はベッドに腰をおろすと 「ね、薫。何かあったのなら、話して?あなた、今日はずっと様子が変だった」 「いや。何もないよ。きっと夢見が悪かっただけだ」 「本当に?」 「本当だ」 冴香はため息をつくと、肩をもう一度撫でてから 「じゃあ、部屋に戻るわ。具合、悪かったらベルを鳴らしてね」 「ありがとう」 部屋を出ていく冴香を見送り、薫は再び吐息を漏らした。

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