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光射す午後に20

穏やかな樹が、珍しく少し苛立ちを滲ませて遮ってきた。 月城は、はっと我に返った。 そうだ。ここで自分が出しゃばって和臣が口を閉ざしてしまったら、何のために樹をわざわざここに呼んだのか意味がなくなる。 和臣の奔放な言動が、樹を傷つけるのではないかと、自分はそればかり気にしすぎだ。 樹はもう、以前のようにただ傷つけられてばかりの子供ではないのだ。繊細で優しい心根は今も変わりはないけれど。 月城は黙って1歩後ろに下がった。 「ごめんね。和臣くん。月城さんは僕にちょっと過保護なんだ」 樹が苦笑しながらそう言うと、和臣は首を竦めて 「あんたと月城さんの関係も不思議だよね。月城さんってもともと、あのおっさんが大学にいた時の助手なんだろ?名前、何度か聞いたことあったの思い出した。ってことは、あんたのお目付け役ってこと?」 和臣の興味の矛先が、こちらに飛び火してきた。月城は無言で微笑み、何も答えない。 「そう。以前はね。でも今は、僕の大切な友人だよ」 「友人。ふーん……。ひょっとしてさ、月城さんもあのおっさんに抱かれてた人?まさか俺ら3人とも、あいつのペットだったってわけ?」 月城は、ハラハラしながらも、内心感心していた。和臣はなかなか鋭い所をついてくる。 たしかに彼の言う通りだ。 ここにいる3人とも年齢は違うが、あの人に飼われていた時期がある。みんな巧の異常性愛の被害者なのだ。 「ペットって言い方はあまり好きじゃない。僕たちは人間だよ、和臣くん」 「でも人間以下の扱いされてたじゃん」 樹はふ…っと小さく吐息を漏らすと 「月城さんのことは、今回の話には無関係だよ。和臣くん。君があの人に監禁……されていたこと、君のお姉さんは知ってたの?」 和臣は笑いながら首を竦め 「まさか。知らないに決まってる。姉さんはおっさんに利用されてただけだ」 「利用されて……?」 「そ。藤堂薫。あんたのあのご立派な兄貴だよ。あいつを好きになったばかりにね」 樹は目を伏せ、口を噤んだ。 「姉さんはあんたの兄貴と付き合ってただろ?まだ大学の頃に。でも、突然別れた。あんたと藤堂薫が、普通の兄弟の関係じゃないって気づいたからだ」 「……どうやって?」 「巧っておっさんの入れ知恵だよ。あのおっさん、姉さんがムキになるのを承知で、わざとあんたと藤堂薫の関係をばらしたんだ」 樹の顔が強ばる。月城はそっと寄り添った。 「どうして……そんな……じゃあ、あの時……」 「姉さん、大切な人に裏切られた、悔しいって、何日も泣いてた」 樹の身体がふらつく。その肩を月城は優しく抱えた。

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