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愛しさの先にあるもの7
「和臣くん、いい加減にしろ!」
立ち上がり、掴みかかろうとする月城の手を避けて、和臣はジーンズの前を開いた。
加賀見は黒服たちに目配せして、和臣を止めさせようとする月城の方を彼から引き離させると
「いいだろう。ストリップして見せろ。私を満足させたなら、さっきの暴言は許してやる。だがな、私をおっさんと呼ぶのはやめなさい。加賀見という名前があるんだ」
言いながら、もがいて立ち上がろうとする樹の身体を抱き竦めた。
「和臣くん、ダメだ、やめてくれ。君にそんなこと、させられないっ」
「どうしてさ?あんただけが犠牲になる必要、ないだろ。元々は俺を助ける為にこんなことになってんじゃん」
和臣はキッパリと言い切ると、ジーンズをおろした。
「樹さんを離せよ。それじゃあ俺が満足させてやれないけど?」
わざと挑発するような言い方をしてみせる和臣に、月城は内心舌打ちした。
あんな無謀なことをして、ただで済むはずがない。怖いもの知らずにも程がある。加賀見は微笑んでいるが、目が全然笑っていないのだ。
……どうして大人しくしていてくれないんだ。
薫が来て無事にこちらに引き渡されたら、出来るだけ穏便にここから和臣と薫を連れ出し、樹を奪還するべく方々に手を回す段取りがついていたのだ。
和臣がこんなことをすれば、援軍を呼ぶことも出来ない。
加賀見はふんっと鼻を鳴らすと、樹の身体を離した。すかさず立ち上がって和臣の所へ行こうとする樹を、別の黒服が引き戻してソファーに押さえ込む。
「来い。出来るだけ淫らに私を楽しませろ」
和臣は怯みもせずにタンクトップとトランクスだけの姿で、加賀見の目の前に立つ。
「ただ脱ぐだけでいいわけ?」
和臣の重ねての挑発に、加賀見は苦笑して
「いや。私を怒らせた罰を受けさせよう」
加賀見が黒服に目で合図する。黒服はス……っと音もなく和臣に近づき、後ろから腰を抱くと、首にナイフを突き付けた。
「やめてっ」
樹の口から喘ぐような悲鳴が漏れた。
「動くな。怪我をしたくなかったらな」
黒服は和臣の耳元に後ろから囁くと、ナイフの刃先をタンクトップの胸元に差し入れた。
「やれ」
加賀見の声と同時に、ナイフが胸元を裂く。肌を傷つけないギリギリで、刃先は薄い布地を次々に切り裂いていく。
和臣は加賀見を睨みつけたままじっとしていた。ボロボロに切り刻まれた布の隙間から、色鮮やかなタトゥが見え隠れしている。
「ほう……。美しいな」
加賀見が満足そうに呟く。
和臣の胸には、乳首を囲むようにして薔薇と蔦のタトゥが刻まれていた。
刃先がそれをツーっとなぞり、中央の小さな尖りに辿り着く。ナイフの背の部分が、まだ色づきの薄い乳首を下から撫であげた。
「…っぅ」
ピクンっと和臣の身体が揺れた。
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