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月の光・星の光14

「そんなに緊張しないで。リラックスして…と言っても難しいだろうがね」 朝霧の言葉に、薫は頬を少し引き攣らせて微笑み 「そう……ですね。でも大丈夫です。自分でもわかっていたことですから。樹の義理の父親の貴方が、それをきっぱり言ってくださるのは……ありがたいと思ってます」 朝霧は首を少し傾げ、ちらっと仕切りの方を確認してから薫の方に向き直り 「今から、私が君に話すことは、決して誰にも言ってはいけない。約束してくれるかな」 薫はハッとして、朝霧の目を見つめた。 柔和な表情だが、目が笑っていない。 「あ……はい。もちろん」 薫の即答に朝霧はそれでもしばらく考えるような顔をしていたが、独り頷くと話し始めた。 「私はアメリカの大学で、社会福祉分野の研究をしながら、事業もしていたのだがね。私の論文を見たある国際機構からコンタクトをもらって、一時期そこの専門機関のひとつを任されていた。樹と……アメリカで出逢ったのはその時だ」 薫は無言で相槌を打った。 「樹と会えたのは偶然だった。その専門機関で極秘裏に進めていた調査の為に、政財界の人間が集うパーティーに潜入したんだ。……すまない。非常にデリケートな組織なのでね。詳しい名称は話せないんだ。君を信用していないわけではないんだよ」 朝霧は途中で言いよどみ、苦笑してみせる。 「あ、いえ。大丈夫です。いろいろとご事情がおありでしょうし。話せる部分だけで充分ですから」 薫が微笑んで首を横に振る。朝霧は軽く首を竦めて 「いずれ……少しずつ明かせることもあると思う。……時が来ればね」 「樹は、そのパーティーに出席していたのですか?」 「うん。正確には彼の叔父がパーティーに出席していて、樹はその連れという形だったが。初めて彼を見た印象は、非常に美しい少年だった。だが、大人ばかりのそのパーティーで彼の存在はとても浮いていたよ。樹自身、何故そんな所にいるのか分からないような戸惑った表情で、常に叔父の後ろに隠れていた」 朝霧から聞かされる話は、ずっと知りたかった樹のアメリカでの様子だ。 薫は緊張した面持ちで身を乗り出した。

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