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月の光・星の光31
「この話、月城さんにはしてみた?」
和臣は唇を尖らせ首を横に振る。
「んー…いや、してねえけど」
「そう……」
樹は身体を和臣に完全に向けて
「どんな夢?話してみて」
和臣は目線を上にあげて困った表情になり
「……軽蔑、するよ?」
「しないよ」
尚もしばらく躊躇していたが、和臣はハァ…っとため息をついて重い口を開いた。
「エロい夢。つまりさ、セックスしてんの。あいつと」
「……無理やり?」
「の時もある。そうじゃねえ時も」
「君は、夢の中で、どんな気持ち?」
和臣は口を手のひらで拭うと
「嫌じゃないんだよね。無理やりされてる時も、薬使われて縛られてさ、オモチャ突っ込まれてめちゃくちゃされてる時も」
樹はゆっくりと瞬きすると、無言で頷いて先を促した。
「嫌じゃないっていうか……むしろ俺は気持ちよくて堪んねえの。すげぇ声出してさ、甘えてあいつにおねだりしてる。もっと、もっと…って」
膝の上の和臣の手が震えている。樹はそっと彼の手の甲に自分の手を重ねた。
「なんであんな夢、見んのかな…。ほとんど毎晩だぜ?夢から覚めても身体ん中が、火ついてるみたいに熱くてさ。興奮が治まんなくてオナニーしちまうの」
「そう……」
「あんたはそういうこと、ないんだろ?……俺さ、病気なのかな」
和臣は苦しそうに顔を歪め、縋るような目をしてこちらを見た。
「薬の、影響が、まだ残ってるのかも」
「夜に変な夢見る以外、何ともないのに?」
樹は震える和臣の指を、少し強く握った。
内容が内容だけに、月城には言えなかったのだろう。
独りで抱え込んで悶々としていたのか。
「それで、ストックホルム症候群…」
「調べたんだ。俺のこれ、どういう病気なのかって気になってさ。そしたら…監禁とかされるとその相手に好意を持っちゃうことがあるって」
「お医者さまには、言ってみた?」
「言わねえ。言ったら絶対、入院長引くじゃん。下手すると、精神科とか別んとこに突っ込まれるかも?って」
和臣は吐き捨てるようにそう言うと、ぷいっとそっぽを向く。
樹は内心、ため息をついた。
「夢以外に、久我って男に会いたいって、思うことはないの?実際、抱かれたいって思ったり」
即座に否定するかと思ったが、和臣は黙り込んだ。自分の両手をじっと見下ろして
「……わかんない。それ、自分でもわかんないんだよね。夢から覚めてさ、自分でしても全然治まんなくて、苦しくて息が出来なくなる。そん時は、身体、何とかして欲しくて……久我に会いたいって……思ってる気がする」
「じゃあ例えば、身体の関係抜きで、その男に会いたくなることある?」
和臣はぶるぶると首を横に振った。
「それはない。……多分……」
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