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月の光・星の光36

「……ここ?え……これって……病院?」 駐車場で車を停め、鬱蒼と茂った木々の間の小道を抜けると、古めかしい鉄製の門が見えてくる。今の建築基準に合わせて建物は改装されているが、門や塀などは建てられた当時のままだ。 初めてここを訪れた時は、樹もまるで廃墟みたいだな…と思った。 「昔はここ、結核療養用のサナトリウムだったんだって。今はホスピスケア専門の入院施設の1部」 「……ホスピス……ケア?」 首を傾げる和臣に樹は頷いた。 「ここから車で5分ぐらいの病院の、別棟になってて、長期入院が必要な患者とその家族の為の施設」 和臣の表情が、だんだん険しくなる。 「……じゃあ、あいつ、病気なのか」 「会えば、わかるよ」 樹は立ち止まったままの和臣を手招きして、門から玄関へと向かった。 玄関ドアの呼び鈴を鳴らすと、カチャッと音がする。樹はドアノブを掴んで後ろを振り返った。 「入るよ」 「あ……ああ」 和臣は戸惑いながら歩み寄ると、樹に続いて中に足を踏み入れた。 「何ここ。屋内じゃないみたいじゃん」 囁く和臣の声には、いつもの無遠慮さは消えていた。すっかりここの雰囲気に飲まれてしまったらしい。 「うん。変わった建物でしょ。ここはひと家族分のスペースが、独立した棟になってる」 樹は勝手知ったる様子で、そのままずんずんと奥へ向かった。その後ろを和臣が物珍しげにキョロキョロしながら歩く。 エリア毎に分けられた棟を通り過ぎて、一番奥の区画に辿り着く。 樹はポケットからカード式の鍵を取り出し、ガラスで区切られたその区画のドアに差し込んだ。 和臣は樹のすることを興味津々に覗き込んでくる。 ドアを開ける前に、樹は再び和臣の方を振り返り 「いい?大丈夫なら、入るよ」 和臣は、ハッと我に返ったような顔になり、視線を泳がせた。 ここに来た目的を思い出したのだろう。 「あ……ええと……。ここ、入ったら、あいつがいるんだよな?」 「うん。今日は天気がいいから、もしかしたら中庭にいるかも」 和臣はゴクリと唾を飲み込むと 「わかった。行く」 樹は頷いて、和臣を伴い中に入る。 白い壁に囲まれた廊下だ。途中のドアには目もくれず、最奥の一番大きなドアを開ける。 「……なんか……迷路みたいだ」 呟く和臣の声は掠れている。緊張しているのだろう。 ドアを開けると、真正面に応接セットが見えた。部屋に足を踏み入れると、そこそこの広さがある。部屋の真ん中は白いキャンバス生地を張った大きな衝立が置かれていて、その奥は見通せない。 「やっぱり外だね。和臣くん、来て」

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