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月の舟・星の海10※

こちらにくったりと身体を預け、放心していた樹が身じろぎする。薫も短い夢から覚めたような気分で、腕の中の樹を見下ろした。 「樹……」 樹は頬や目元をうっすらと染め、とろんとした目で薫を見上げて、ふうわりと笑った。 (……っ) それはいつものぎこちない笑みじゃない。どきっとするような大人びた……妖艶と呼んでもいいような微笑で……。 「……気持ち……よかった……」 とろりと滴る蜜のような樹のうっとりとした声に、薫は堪らなくなって細い身体を両手でぎゅっと抱き締めた。 「そうか。よかった、か」 自分の背中にしがみついていた樹の手が、もぞもぞと移動する。 「ね。兄さんも……気持ちぃく、してあげる」 「え‍?」 薫の腰で蠢く樹の手が、スラックスから濡れたシャツの裾を引っ張り出すと 「兄さんも、脱いで」 「樹、いや、」 「兄さんのも、こしこし、する」 戸惑う薫に、樹はまた婉然と微笑んだ。その微笑が眩しくて、薫はどぎまぎしながら 「俺も、脱ぐのか‍?」 「うん」 当然のように頷かれ、薫はまだ少し戸惑いながらも、樹の身体から手を離し、シャツの胸元のボタンを外し始めた。 「兄さんの、ここ……」 樹の目線が、自分の下腹に釘付けで、ちょっと……気恥ずかしい。 樹に急かされるように、薫は服を全て脱ぎ捨てた。 泡だらけの樹にむしゃぶりついたせいで、口の中が石鹸で苦い。シャワーのコックを捻り、お湯を口に含んですすぐと、ついでに樹の身体にもシャワーのお湯をあてて洗い流す。 樹は目を細めて、気持ちよさそうにじっとしていた。そういう表情にも妙な色気を感じて、薫は樹から目を離せない。 ふわふわと柔らかい樹の癖っ毛は、濡れてしっとりと額や頬にへばりついている。髪の先から滴り落ちる雫ですら、樹の妖しい美しさを強調している気がした。 目線を下にずらせば、透き通るような白い肌と対照的に、赤く色づいた小さな胸の飾りが見える。 女のような膨らみのないその胸を彩る乳首が、つぷんと勃ちあがっている様子は、ぞくっとするほど美しくて艶かしい。 視覚的に煽られて、腰に重い熱が溜まっていく。薫は思わず、熱い息を吐き出した。 「兄さんの、ここ。……触っても、いい‍?」 言いながら樹が顔をあげ、小首を傾げる。その拍子に、濡れた前髪のひと房が、さらりと片目にかかった。 そういう樹のささいな仕草や表情に、いちいちドキっとしてしまう。その透き通るような瞳で真っ直ぐに見つめられると、吸い込まれてしまいそうだ。 「……あ……ああ、いいよ」 樹は頷くと、再び視線を落とした。 あの綺麗な瞳が、自分のそこを見つめているのだ。そう思うだけで、下腹にまたじわりと熱が溜まっていく。 樹がそろそろと手を伸ばし、細い指先でそこに触れた。 触れられたそこがひくりと震えて、更に勃ちあがった。 「おっきい……」 感心したような微かな呟き。その言葉に反応して、自分のペニスがまたひくりと動く。 樹が両手でペニスを包み込むようにした。 薫はぎゅっと眉を寄せる。 これは甘い拷問だ。 樹の言葉や仕草には、不思議なくらい性的ないやらしさが感じられないのに、自分のそこは煽られて、情けないくらい歓んでいる。正直、猛り過ぎて痛みを感じるぐらい、がちがちに勃起していた。 薫は熱い吐息を漏らしながら 「樹……強く、握ってくれるか‍?」 樹が上目遣いにこちらを見た。 「舐めて、いい‍?」 薫は反射的に樹の赤い小さな唇を見た。樹はこちらの返事を待たずにしゃがみ込むと、手の中のペニスの先に、ちゅっと口付けた。 ……ああ……やばい……。 これ以上ないくらい、がちがちのそこに、また急速に熱が溜まる。腰に、甘い痺れが走り抜けていく。 薫は息を荒らげながら、震える手を伸ばして、しゃがみこんだ樹の髪の毛を撫でた。 「樹……」 樹はまた目だけあげて首を傾げる。 「ぱくってして、いい‍?」 「……っ」 (……もうダメだ。そんなつぶらな瞳で、そんなこと) 薫は樹の髪の毛をぎゅっと掴み締め、掠れた声で囁いた。 「咥えて、くれるのか‍?」 「うん」 樹は無邪気に頷くと、口を少し開けて先っぽを……はむっと咥えた。 「……っく」 見下ろす樹の小さな唇が、自分のものを咥えている。熱い舌が動いて、自分の先端をぺろぺろと舐めた。 視覚的な刺激と、樹の口の感触。 内腿が痙攣を起こしたように、きゅっとひきつれる。 根元の方を握った樹の手が、戸惑いがちに動く。そのもどかしい刺激すら、強烈過ぎて目眩がしそうだ。 (……樹……樹……)

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