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第5話
「…いや、無い。いくらなんでも無い。あれじゃあ勝負になんねえじゃねえか!?」
「すみません…」
「まさか兄貴があそこで寝ちまうとは思わねえだろ」
「なんだったんだよあの時間…」
結局あの後裕斗が寝てしまったので勝負は中断。二時間後、やっと目を覚ました裕斗と、起きるのを待っていた俺と優斗。あんな事があった後だと顔を合わせるのも気まずい。全員が恥をかいただけで終わった最悪のラストだ。
「…兄貴、めちゃくちゃ喘い」
「忘れて」
優斗を制止するその声は至って冷静だったが、顔を見たところ全く冷静ではないようだ。
(真っ赤だぞ裕斗…)
兄弟の意外な一面を見る事になってしまったが、少し高ぶってしまったのも事実だ。やってる時は良かったが思い出すだけで死にたくなる。
「はぁ…結局部屋はどうすんだ…」
「じゃあ三人で使うとか」
「ただでさえ狭い部屋更に狭くし」
「三人で居りゃ、いつでも抜き合い出来んだろ」
冗談か否か優斗から軽い口調で告げられたその言葉に、反論するつもりが言葉が出なかった。
「いや、…あのな…」
「興奮しただろ、正直」
返答に困り助けを求めるよう隣に視線を向けると、裕斗も困惑と羞恥が入り混じったような複雑な表情で目を背けている。
「いいんじゃね。男なら溜まるししょうがねえだろ。折角一緒に住んでんだし、別に俺は兄貴達の事嫌いな訳じゃねえから抵抗ねえけど」
こいつはすぐこういう事を言う。学校でもモテていると聞くからそういう事なのだろう。俺達より経験も豊富そうだ。
…一度三人で寝てみるのも悪くないか。何も変な気を起こさなければいいのだ。分けるのが嫌なら一部屋にまとめてしまえばいい。ある意味名案だ。
「…はぁ……、…やってみるか…三人で一部屋…」
最初から最後まで末っ子に引っ張られっぱなしだ。情けないがもうどうにでもなれという気持ちだった。
今日からまた一段と狭くなる俺達の部屋。これから何が起きるか、それは俺達にしか分からない。
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