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第84話

「瑞季…お前の全て…俺にくれよ。俺も全部お前にやるから…」 手の甲で頬を撫でられながら ささやかれ、全身が震える。神経を全て抜かれたように手も足も自由に動かない。 目だけを大きく見開き、じっと日向を見つめ続ける。潤んだ目からまた涙が:零れ落ちた。 それを肯定と取ったのか否定と取ったのか、日向の手が頬から身体の真ん中を通って滑り下りて、膨らんだ下着まで辿り着いた。 薄い生地の上からやわやわと握られて、堪らずビクンと跳ねた僕は、快楽に贖えず甘えた目を向けて、もう日向のなすがままだ。 日向は僕から目を逸らさず、手だけを緩やかに動かしている。時々飛び出ている切っ先を弄びながら。 自然と動き出した腰はシーツと擦れ、動きを止めようとする(かかと)は力が抜けて、しゅるりと何度も滑っていった。 あふっ、あんっ 徐々に溢れ出した鼻に抜ける吐息混じりの声が、空間に広がりゆく。 先走りの愛液は、下着だけでなく日向の手や僕の腹を汚し始めて、にちゃにちゃといやらしい音を立てていた。 普段ならそんな音は恥ずかしくて日向に聞かせたくないし、自分も聞きたくないのだが、『全てをくれよ』という日向の言葉が頭から離れなくて、抵抗するのを止めていた。

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