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**虚偽**(1)
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「空也 さん、オレ、隣の霞ヶ丘 高校の2年で、岬 相太 って言います。駅のホームで貴方を見かけてから、ずっと気になっていました。オレと付き合ってくださいっ!!」
放課後の裏門。人気がない場所で、俺は今、告白されている。
相手は顔を伏せていて、よくはからわからないが、そこそこいい方だと思う。茶色い髪は地毛なのか、艶やかだ。身長もなかなか高いし筋肉質ではないけれど貧弱にも見えない。
見てのとおり、男が男に告白。あまり見ない光景のようにも思えるが、別にないこともない。なにせ俺は、肩まである黒髪に、日焼け知らずの白い肌。女子にも見間違われがちな、大きい目に長い睫毛。無駄な肉付きはない、細い体。結構美人らしいし? だけど大概 、相手が選ぶのは俺じゃなくて、空也の方だ。
――そう。この男は間違いを犯している。
俺は空也じゃない。海也 だ。
そして空也は俺の双子の弟。一卵性双生児だから、外見がとにかく似ている。
だけど、性格は違う。
空也はどっちかといえば、かなりおっとりした性格で、柔らかい雰囲気をしている。
対する俺は、っていうと……。
腹黒?
友人曰 く、きついことを平気で言うらしい。
岬 相太と名乗る目の前の男は、俺を空也だと思い込んでいる。
両手を震わせ、ラブレターを差し出している。
彼の身長は俺よりも高いが、腰を折っているから、かなり小さくも見える。
……こいつ馬鹿だろ。
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