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**虚偽**(3)

 そう否定したいのに……なんでだろう。  俺、相太のことを考えるだけで、とても楽しいんだ。  口角が自然と上がっていくのが、自分でもわかる。  理由はきっと、相太があまりにも純粋だから……。  彼は、俺の我が儘をたくさん聞いてくれて、ちやほやしてくれるから……。  まさか俺が相太を好きになっていくなんて、そんなこと計算に入れていなかった――。  相太の告白を受けてから1週間目のその日。  今日は相太と付き合いはじめてからの、遊園地で初めてのデートだ。  電車で30分。  遊園地での初デートの待ち合わせは、ゲート前。  俺よりも背が高い彼は、俺の姿を見るなり、突然泣き出してしまった。 「なに泣いてんの? 17歳にもなってみっともない」 「だって、まさか空也さんが、オレと恋人になってくれて、しかもデートまでしてくれるなんて、なんだか夢のようだから……」  平気で感情を表に出す相太は、俺にない物をたくさん持っている。  だからだろうか、相太といるのが楽しいのは……。  また、新たな、「好き」を発見してしまった。  好き。  相太といると心から楽しいって思える。  だけど相太は……?  ダメだ。  俺の良心が限界だった。 「ごめん、俺、実は空也じゃないんだ。兄の、海也の方なんだ」 「――え?」  いくら相太のことを好きになったとはいえ、彼を騙していたのは事実だ。  俺が空也じゃないとわかった相太は今、いったいどんな表情をしているのだろう。  ……彼の心情はきっと、打ちのめされているに違いない。騙されたと、俺を恨むだろうか。

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