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**虚偽**(4)
――怖い。
相太に嫌われるかと思うと、ものすごく怖い。
顔、見られない。
胸がズキズキする。
苦しくて、吐きそうだ。
「……だから、もう。さようならっ!!」
俺が海也だと打ち明けたその日。
俺は、相太との、心待ちにしていたデートを自ら台無しにして、そのまま帰宅した。
相太はそれ以来、俺の前に姿を現さなくなった。
……これで相太とは終わり。
俺は心の中にぽっかりと穴があいたような、そんな寂しさを覚えて毎日を過ごしていた。
そして今日は、相太と会わなくなってから3日目の放課後。
俺は裏門にいる。
そんな俺の前には腰を折り、地面を見つめる男がひとり。
岬 相太がいた。
なぜだ?
なぜ、コイツはまた、俺にラブレターを差し出している?
「あの、オレ、貴方が好きです!!」
「っ、はあ? お前、また間違えてんのかよ! ばっかじゃね?」
ほんと、いい加減にしてほしい。
俺は空也じゃねぇし。
何回も言わせんなよ!!
コイツを好きな俺が馬鹿みたいじゃん。
ああ、もう。頭がズキズキする。
胸も痛い。
もし、もしも。俺が、こんな自己中心的な性格じゃなかったら――。
俺が空也みたいに大人しくて、ほのぼのとした性格だったなら、相太は俺を好きでいてくれただろうか。
これは罰。
空也と偽った、俺への報いだ。
俺は痛む胸を押さえ、相太から去ろうと無言で踵を返した。
そうしたら……。
グイッ!
「ぅわっ!!」
俺の腕が後ろに引っ張られた。
相太の力強い腕に、すっぽりと包まれてしまう。
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