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四章 憎悪と破壊願望 8
タクミは戸惑いの声を上げたが、次にマコトが取り出した物を見て一気に青褪めた。
「何で、お前がそれ……」
「兄さんの忘れ物ですよ。どうせなら使い慣れた物の方が良いと思いまして」
マコトはピアッサーを手に、もう一つ小さな箱を取り出した。この箱にも悪趣味なラッピングが施されている。中身は容易に想像出来た。
「やめろっ!」
「何故? 兄さんピアス空けるの好きでしょ?」
小箱の蓋を開けたマコトは、中身を見せつけるようにしてタクミに近づけた。
「でも両耳はもう空けてるし、口や臍は俺の好みじゃないから乳首にします。シンプルな造りだけど内側に……ほら、イニシャルを彫ってもらいました」
マコトは収められていたうちの一つを手に取り、それが分かる位置まで持っていく。
「…『M to T』?」
「マコトからタクミへ。ね、これを着ければ兄さんはずっと俺のものでいられる。これからも俺を楽しませてくれよ……」
マコトは鈍く光るシルバーのピアスとピアッサーを手に、それらをタクミの乳首に宛がった。
「待ってくれ!」
タクミから静止の声が上がる。マコトは目だけでタクミを見て反応を待った。
「逃げようとしたことは謝る。罰だって受ける。だからそれだけは止めてくれ!」
顔を上げて懇願する様は哀れにも思った。ころころと主張を変え、ここから逃げ出す為なら何でもやると言った兄。きっとタクミは、イニシャル入りのピアスを着けられるのが嫌なんだろう。でも、それはしょうがない。それを身に着けることが兄に科したお仕置きなんだから。
「言いたいことはそれだけ?」
「ま……っ」
マコトはタクミの返事を聞く前に、赤く尖った乳首に向かって鋭い針を突き刺した。
「あああっ!」
「うるさいなあ。悲鳴を上げる程の痛みじゃないでしょ」
右の乳首にピアスを装着したマコトは、続けて左側にも手を伸ばした。
「もう逃げない! だから外してくれ!」
「何度目だよそれ」
「うああ……っ!」
「もう聞き飽きたさ」
タクミの両胸のピアスは傷口から滴る血に染まり、鈍い光を放っていた。
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