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五章 激情と死骨 6

「俺、怒ってないよ。それとも何? 俺に怒られるような事でもしたの?」 「……勝手にすればいい」  タクミは膝に顔を埋めたまま告げる。マコトの気配が険悪なものになったとしても、もうどうでもよかった。 「どうせ俺に選択肢なんかないんだ……っ、とっとと犯ればいいだろ!」 「何ムキになってるの? 言ってることおかしいよ」 「ふざけやがって……っ、くそ……!」 「落ち着きなよ兄さん。どうしちゃったのさ」  正面に膝をついたマコトの腕に抱きこまれる。その大きな手は背後に回り、子供をあやすように一定のリズムでタクミの背をポンポンと叩いた。今までは自分が弟であるマコトにしていた行為なだけに、その行動はタクミの神経を逆撫でした。 「……早く挿れたいんだろ、マコト」  タクミは埋めていた顔を上げ挑発的にマコトを睨みつける。その言動に呆気に取られたマコトは一瞬硬直し、それから大きな笑い声を上げた。 「ははは……っ!」  弟は狂っている。ここ最近は特に感情の起伏が激しく、また抑鬱状態が酷い。そしてそれを冷静に受け入れる自分自身も、どこかおかしい。もう以前のように笑うことは出来ないだろう。 「はーあ」  ひとしきり笑ったマコトはタクミに軽く口づけ、蕩けるような笑みを浮かべる。 「久しぶりに名前呼ばれたな。しかも何? その言い方。もしかして拗ねてる?」 「……」 「そんなにヤリたいならするけどさ、さっきまであの人に遊んでもらってたじゃん。まだ足りないの?」  高崎の手つきを思い出して身体の奥がずくんと疼く。一度忘れた熱が再びタクミの肉体を苛んだ。 「……足りないみたいだね」  図星を点かれたタクミが息を飲むと同時に、後頭部に鈍い痛みが走る。目の前に星が散った。目をギュッと閉じて痛みをやり過ごしている間にマコトはタクミを組み敷き、下腹部に片膝を乗せてグッと体重をかけた。 「あぐ……っ!」 「勃ってるじゃん」  マコトはタクミの肩に乗せた手に力を込め、肌蹴た白い皮膚に爪を食い込ませる。 「あの人に触られただけで、こんなになるんだ」 「ち……がっ、あぁ……!」 「違う? あ、そうか。今、兄さんに触れてるのは俺だもんね。俺の手じゃないと、もう感じないだろ? 兄さんを満足させられるのは、俺だけだよな?」 「いっ……ああ……っ、あ……ぁ!」  痛みと混乱で涙が出る。タクミが言いよどむ度にマコトは膝をぐりぐりと動かし、硬くなった性器を圧迫した。 「ねぇ……俺だけって言ってよ……」  マコトが甘えるような声でタクミに囁く。その声が耳の奥に届いた瞬間、下着がぐっしょりと濡れた。射精したのだ。

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