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五章 激情と死骨 7

「ほら、やっぱり俺で感じるんだよ」  違うと声に出して叫びたかった。でも出来なかった。何故かは分からない。それでもマコトの声が耳に入った時、腰の奥に何かが走って気づいたら達していた。  実の弟に――しかも、間接的にイかされた。 「あ……ぁ、あ……うあああぁぁぁぁぁ!」  タクミは絶叫した。狭い部屋に轟く自分の声はコンクリートの壁にぶつかり、何度も乱反射を繰り返す。ひどく耳障りだ。もう終わりだ。頭の中は血の気が引いて青褪めているのに、欲望を放った性器は生温かく、服の上からでも分かるほどの染みを作っている。  ――気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い……っ! 「誰が?」  気づけば声に出していたようだ。怪訝な顔で問いかけてきたマコトに、タクミは冷たく言い放った。 「……っ、俺も……お前もだ……!」 「そう」  言葉は軽いがマコトの声色はひどく複雑だった。怒りの中に含まれる、わずかな戸惑い。それを振り払うようにマコトはタクミの前をくつろげ、粘ついた性器を取り出した。マコトの激情は止まることを知らない。 「ところで、その痕何なの? 俺への嫌がらせ?」 「……あ、と?」 「……はッ! 本当にムカつくな」  何がと訊くよりも先に首筋に痛みが襲い掛かる。左側の鎖骨のやや上の位置にマコトが噛みついたのだ。ギリギリと歯を立て、今にも引きちぎらんとするマコトの激しさに、タクミは悲鳴すら上げられなかった。 「喰い尽くしてやる……!」  顔を上げたマコトの唇には赤い雫が滴っていた。 「あんたの存在なんか全て食い尽くしてやる……死ぬまで俺の中でもがき苦しめばいい…!」

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