63 / 63
episode"M" 3話
◇
情事後、拓海を残してベッドから離れた俺は窓辺へと向かった。監禁部屋と違い高層マンションの最上階であるこの部屋からは、最高の景色が見渡せる。だが、今日は生憎雨が降っていた。
気分転換に俺は煙草に火をつけ、煙を肺に取り込む。少し噎せた。
目線を上げ、どんよりとした空を睨む。嫌な天気だ。嫌な舌触りと共に、忘れたはずの苦い記憶が蘇ってくる。
「……アキ」
どれだけの時間窓辺に立っていたのだろう。気づけば咥えたままの煙草から灰が落ち、フローリングを汚した。
この雨はしばらく止みそうにもない。
了
ともだちにシェアしよう!