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一章 夢と現実 1

 下肢に違和感を覚え、タクミは薄くまぶたを開いた。今の自分自身の状況がまったくつかめない。どうして全裸で寝ているんだ。いくら夏場だといっても、タクミは裸で寝るようなタイプではない。それに身体が重くて、思うように動かない。まだ夢の中にいるんだと自分に言い聞かせ、タクミは再び意識を飛ばそうとする。  だが下肢への違和感はまだ続いている。正確にいえばタクミの性器は何者かの口に含まれていた。舌を巧みに動かし、裏筋までしっかりと舐め上げ、タクミの快感を高めていく。 「……うぅ」  タクミはわずかに喘いだ。男なら誰しも感じる場所をこうも的確に刺激されては、ただ寝ているだけの自分に打つ手はない。  しかし疑問が残る。タクミに奉仕している相手は誰なのだろう。昨日の記憶では女を連れ帰った覚えはない。ましてや実家住みだ。さすがに家族が住む場所に、恋人でもない女を連れ帰らないだろう。  相手が頭を前後に動かし、タクミのものを高めていく。まだタクミは夢と現実との狭間にいた。相手が何者なのかを知りたい。でも身体が動かない。両腕が頭のほうに引っ張られているような感じもする。いったいどういうことなのだろう。  考えをまとめようとするが、性器を愛撫されている状態では、まともな考えはできそうにもなかった。タクミのものは徐々に硬度を増していく。やがて絶頂を迎えようとしたそのとき、突然根元を細い布のようなもので縛られた。 「あっ……」  タクミは切なく吐息をこぼした。すると相手は喉の奥でククッと笑い、そのままタクミにのしかかった。相手の顔が眼前にさらされる。 「……マコト?」 「今頃気づいたの、兄さん」 「お前、何して――っ」  ようやくタクミは自分の状況を理解した。両腕はロープのようなもので固く縛られ、そのままベッドヘッドへと繋がれている。衣服はすべて剝ぎ取られ、身体を覆うものは何もない。そして、実の弟であるマコトに組み敷かれている。さっきまでタクミの性器を愛撫し、根本を縛って射精できないようにしたのも、すべてこの男なのだ。

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