788 / 1053

第15章の18

「でも、俺、そのロッカーに入んない…」 「あーもう、無駄にデカいやつだな!」 「そしたらその仮眠室は? ドアを少しだけ開けておけば…」 「須藤さん、アッタマいいっ! 」  そしてここからは社長の演技力が問われるところだが… 「…もしもし、服部くん? 真樹に急いで話したいことができたんだけど、 すぐこっちに戻ることはできるかな? 内容? <子供のこと>ってこっそり言ってくれれば… あ、そう、すぐ来れる…」 それを聞いて、諒は社長の机の後ろにある<仮眠室>に隠れてドアの脇に座り込んだ…  スタジオで、ツアーの音決めをしていた真樹は、予想以上に早くやってきた。  ドアの隙間から聞こえる声は、諒が後でどう謝ったらいいか困るくらい、うわずっていた。 「あのっ、俺に子供って、恵理ちゃんからですかっ? それともあちらのお父さんかお母さんからですかっ?!」 「あぶないっ! 」 何かがぶつかったような鈍い音。 痛い! という須藤の声。 まあ座れ、落ち着け、という社長の声… あのいつも落ち着いた真樹がどれほど取り乱しているかと思うと、 諒はすまなさで身の置き所もない気持ちになった。

ともだちにシェアしよう!