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第15章の18
「でも、俺、そのロッカーに入んない…」
「あーもう、無駄にデカいやつだな!」
「そしたらその仮眠室は? ドアを少しだけ開けておけば…」
「須藤さん、アッタマいいっ! 」
そしてここからは社長の演技力が問われるところだが…
「…もしもし、服部くん? 真樹に急いで話したいことができたんだけど、
すぐこっちに戻ることはできるかな? 内容? <子供のこと>ってこっそり言ってくれれば…
あ、そう、すぐ来れる…」
それを聞いて、諒は社長の机の後ろにある<仮眠室>に隠れてドアの脇に座り込んだ…
スタジオで、ツアーの音決めをしていた真樹は、予想以上に早くやってきた。
ドアの隙間から聞こえる声は、諒が後でどう謝ったらいいか困るくらい、うわずっていた。
「あのっ、俺に子供って、恵理ちゃんからですかっ? それともあちらのお父さんかお母さんからですかっ?!」
「あぶないっ! 」
何かがぶつかったような鈍い音。
痛い! という須藤の声。
まあ座れ、落ち着け、という社長の声…
あのいつも落ち着いた真樹がどれほど取り乱しているかと思うと、
諒はすまなさで身の置き所もない気持ちになった。
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