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第15章の28
「ああ、それならよかった…」
麻也の声は虚ろで、しかし、自分を見てくる目はどこか気づかわしげで、諒はがっかりした。
(もしかして、俺が余計な情報を漁りまわっているとか思ってるのかな…)
諒がそんな悲しい気持ちでいると、麻也は、
「…じゃあ僕はスタジオに戻ります。」
と、鈴木に目くばせして、すぐにでもこの部屋を出ていきそうな様子だった。
諒ははらはらしたが、社長が麻也を引き留めてくれた。
「麻也、こんな風に一年終わるの嫌だから、ここにいるみんなと、あと直人たちも呼んで、
軽く忘年会やろうかと思ってるんだけど、どうだろう? 」
「あ…」
珍しく麻也は立ち尽くしたまま、考え込んでいた。
さらに社長は、
「これから音作りったって、今日中に終わるもんでもないだろ。
明日からは休みだし。」
「は? えっ? 休みは明日から? 」
まぎらわしくも、あさってからの正月スケジュールを尋ねた自分を責めてくれるかと諒は密かに期待したが、
麻也はこちらを見てもくれず…
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