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第16章の42←(諒との<誓い>を悔やむ麻也王子)
こんなことになったのも、ありもしないスキャンダルのせいだが、
諒があれだけ怒ったのは無実なのももちろんあるだろうが、
女も男もとにかく寄ってくるのに、
自分がいるばかりにたくさんの恋愛が経験できない鬱憤もあったのかもしれない、
とも思いついて、訳ありの麻也はつらくなった。
(俺みたいな過去を隠した傷物に愛を誓ったばっかりに、
まだ若い諒が、望んでも<芸の肥やし>も経験できないんだ…)
それって諒のような美しいアーティストにとってもったいないことなのでは…
と、客観的に思う自分もいるが、すぐにそれを許せない本音も湧きあがってくる。
(…どんなに諒にふさわしくて、俺の次でいいと言ってくれる浮気相手だとしても、
やっぱり嫌だ。耐えられない…)
その一方で、諒にも、真樹や直人にさえメールひとつできない年上のプライドが嫌になる。
そして…連日のハードスケジュールで頭も体も疲れ切っているはずなのに、
急にかすかな不快感のようなものがこみあげてきて自分を満たし、
睡魔を振り払っているようなことにも気が付いて、
麻也は大きなため息をついてしまった。
(…まさか…また…? )
それは諒だけが原因ではないとわかるから…
(…俺のメンタル…どうして勝手にこうなるんだよ…)
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