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第16章の41←帰らぬ諒を寂しく待つ麻也王子

 …そんな話をしていても、諒からは何の連絡もない。 真樹たちも、口には出さないがそれぞれの携帯を気にしてくれているらしいのに…  とはいうものの、いくら家に帰るのが嫌でも、 二人を引き留めておくのは申し訳なかったので、麻也の方からおひらきにした。  よっぽど真樹の家にでも避難させてもらい、 話してもいい部分だけでもグチを聞いてもらいたい気もしたが、 諒も自分もあの部屋に今夜はいないことになったら、 <二人の愛の巣>を自分まで見捨てたようで、嫌だったのだ。 …まあ、今回も諒はあっさりとは帰ってこない気はしたが…  一人きりの部屋はとても寒々しかった。  が、麻也はリビングでワインを飲みながら諒を待つことにした。  でも、いざ諒と顔を合わせたら、何を話せばいいのだろう。 また、問題が解決していないのは同じなのだ…  寂しくてテレビをつけてみたが、麻也が眺めたいようなものは何もなかった。 しかし、落ち着いたものが欲しくて、 諒がいつも録画している美術番組のビデオを見ることにした。 が、その落ち着いたナレーションすら疲れる気がしたので、 音声を消して画面をぼーっと麻也は眺めていた。  …それでも諒は帰ってこない。  誰からも連絡は来ないから、今どこにいるのかも心配だった。  ヤケをおこして誰かと寝ていなければいいが、 と、嫉妬の前に、諒の身が案じられてならなかった。

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