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第16章40

 2人は、麻也の心をぐっさりと傷つけた諒の捨て台詞までは知らないようで、 麻也の傷付き具合は、 関村女史のことがファンにまで知られ始めたことが<バンドの傷>に思えるからだと思っていたらしい。 「兄貴には黙ってたけど、他にも有名人で諒にハマってる人はいるみたいだよね…」 と、音楽番組でたまに一緒になるナチュラル系の女性歌手や 関村以上の大女優、さらには女性向けブランドの女性社長などをあげ、 「その人はもう、諒よりかなり年上だし、お金を積むって言ったってウワサなんだよ。 仲介者には何百万、諒には一晩で一億とか…」 「ウチらを何だと思ってるんだろうね、にーちゃん。」 エビフライをつつきながら直人が言うと、真樹は、 「ほんとだよ。俺たち双子なんかは男の役者さんから何度も声かかるし… あー、早くツアーに出たいよねえ。 純粋に俺たちを愛してくれるすんごい数のファンに直接触れたい…」 「…」 二人が相手をしてくれるのはありがたかったが、麻也は口を開く元気も出ない。 すると直人が、 「兄者、カキフライ冷めちゃうよ。」 「兄者? 」 ようやく麻也が少し笑って訊き返すと、 「だって真樹にーちゃんの兄貴じゃん? あれっ?<兄上>の方がよかった? 」 「うん。」 そんなやりとりに真樹もほっとしたように笑い、しかし、 「とにかくさあ、兄貴もだけど、直人も俺までいろんな人に狙われてるわけよ。 協力しあって跳ね返そうねえ…」

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