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第16章の44←(諒との別れを意識し始める麻也王子)

でも…それは麻也がこれまでの人生で初めて得た安らぎのような気がしていたのに… (でも、アーティストはそれじゃ本当はいけないのかもしれないな… 孤独じゃないと…) 麻也がその時思いついたミュージシャンの先人たちはあんまり<孤高>という言葉が似合わなかったが、 諒が好きだといっていた作家や画家なんかは、 周囲に本質的なところでは理解されず、 孤独のうちに死んでいった天才が続いていたように思う。 (あ、ロックでも若死にした人はそうだった… そして、そういう人ほど、作品やライブは研ぎ澄まされて、 受け手にはぐっさりくるんだ…)  自分も諒と恋愛する前の方が色々と創作できていたようにも思えるし… 規模の大きさはもちろん違いすぎるが… そしてそれも諒たちメンバーの実力が信じられるので、 無意識に甘えているということなのかもしれない… (外泊が許せない、とか言って、ケンカして別れた方がいいのかな… 諒、浮気でもしてくんないかな…) そうなれば、自分は絶対に諒には触れられなくなるし、 傷つくのは自分だけで済むから… 諒も<孤高の天才>の仲間入り… (…でも、俺の方は諒と本当に向かい合ってただろうか… もうすでに諒は孤独かもしれない…) だから、あんな鬼気迫るステージングができるのではないのか…  しかし、やはり、ツアーも控え、東京ドームも見えてきたと言われている時に、 そんな大変な変化を迎えるのも無理な話だ。 その点は諒も同じだろう。 (でもやっぱり、このツアーの後にひと波乱、かな…) でも、その時に<悪魔のキス>はどうなるのだろう… (それくらいは続けなきゃかな。 目に見えないロックの神様にささげるものだから…) …そんなことを考えているうちに、 麻也のひとりぼっちの夜は明けていった…

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