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第16章の45←(付き人をつけられた麻也王子と諒)

 その日…9枚目のシングルのビデオのリハーサルでは、麻也ばかりでなく、 集合したメンバーも事務所のスタッフも、疲れがピークに達している顔で… これがいつもの監督や外部スタッフでなければどうなっていただろう、 といったテンションの低さだった。  そんな状態だというのに、撮影スタジオだというのに、 いきなり、麻也は一人の青年を紹介された。ゴツい感じの、 見た通り大学まで柔道部にいたという、小野という名の男である。 バイトだが、今日から麻也の専属の付き人兼ボディーガードということだった。 いかにも人の良さそうな彼と挨拶をかわしているうちに、 遅刻してきたコート姿の諒に声をかけそびれた。  諒にも付き人がついたらしく、小野と違ってメンバーより小柄な、 でも女の子にモテそうなさわやかな青年が諒と挨拶を交わしているのが見えた。 それから諒はしばし姿を消し、麻也には見覚えのないダンガリーシャツで現れた。 …しかし、お互いに言葉はない…  衣装に着替える前に、リズム隊やスタッフたちと集まって、 再度、付き人たちの紹介があった。 そこで、諒の付き人が三浦という名前であることを、麻也は初めて知った。

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