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第2章の23

 打ち合わせの開始前、本人のいないところでこっそりとささやかれるのは、 「まさかボーカルをすげ替えるわけにもいかないし…」 「音楽性の違いで、とか言っちゃって。」 「でも代わりを探すのもなかなか大変だよ。」 …居合わせたMA-YAもKYOも言葉がなかった。  ツアー先に向かう電車の中、隣り合わせたKYOにMA-YAは確認してしまう。 「俺たち、『デカダンス』を越えるはずだったよね。」 「ああ。今さら背徳の世界、とか耽美的、とかは二番煎じになるからダメ、とか言われてもなあ… 何とでもバリエーションはあると思うんだけど…」 「いくら曲を提出しても却下だもんねえ…」 結局、二枚目のアルバムも、一枚目を踏まえた歌謡ロックになり… ファンの集いも小規模になったというのに、MITSUは、久しぶりのテレビで、 「プロになって変わったことはありますか? 」 との問いに、 「宣伝活動に時間を取られることです。プロになれたら演奏活動に専念できるものかと思ってました。」 などとぬかす。  それからテレビの話はこなくなり、取材というものがぱったりと減った。地方のキャンペーンも減った。  そんな矢先に…

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