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第10章の38

「真樹は歌も上手いからなあ…」 何気なく諒がつぶやくと、歌には自信のない麻也が、 「何その、真樹『は』っていうのは! 」 「お宅の弟さんホメてんだからいいじゃん! 」 「うるさい! 曲聞こえないよ! 」 直人に怒られるほどの、いい出来の曲だった。 新鮮なのだが、これまでの路線とも外れることのない… それで、アルバムの全体像が見えてきたら、一曲チョイスするという贅沢な計画になった。  しかし…肝心の2人は、ツアー中に色々と考えていたとはいえ、その『ヤマ』すらも張れてはいなかった。  諒はネタ帳をパラパラとめくり、 「ま、俺は相変わらず、同性愛と社会批判と純愛を書くとして…」 とは言ったものの、合うネタがないのか、小首をかしげるとネタ帳を閉じてしまった。」 「諒、狂気の愛は? 」 と、麻也が言うと、 「あ、そうだね。タイアップでね。あと悲恋と、か。」 「兄貴は? 」 「タイアップは間接的な応援歌と、苦悩して救いのある曲とで、 あとは全体も見て足りなさそうなのを作る、と。」 「やっぱ兄貴がアンカーになっちゃうよね。 スケジュール本当に大丈夫なの? 」 諒も苦笑いしながら、 「いざとなったらゴーストライターやるよ…」 「諒ったら何を…大丈夫だよ…」 麻也も苦笑いになってしまった。 すると直人が、 「その間、ラジオとテレビは俺全部出席するけど、二人以上、って言われたら、 悪いけどみなさんも交代でついてきてね。」 …そう言われて気づく。まだまだ、「この前のツアーと武道館」のインタビューもしばらく続くのだ…

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