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第18章の74★イライラに苦しむ麻也王子

 スタジオに着くと、麻也は須藤にも鈴木も特に怒られはしなかった。 しかし、鈴木には、 「社長がいつでもまた戻って来いって言ってました。 電話するのが気づまりになら公彦くんの携帯にって。」 とにかくこの大事な時に麻也に倒れられては困るので、 諒と夜過ごすのも社長宅に帰るのも自由だという。 「諒さんとケンカしたら無理しないでこっちに帰れ、と伝えるようにも言われました。」 …恋人といても癒されず、病状も良くなりそうにない自分は、 自身でも困るが周囲も扱いに困っているだろうなとは思う。    この日、諒のボーカルの方は無事OK になり、まとめ作業のマスタリングに進んだが、 夜明け近くまでかかったので麻也は諒に着いて行ってマンションに帰るべきなのか悩んだが、 薬が切れての妙なイライラがどうにも耐えられなくなったので、 公彦の携帯にメールを入れて社長の家で寝ることにした。 しかし黙って帰るのもあんまりなので、 諒の付き人の小野に伝えてもらったが、彼は困ったような表情で戻ってきた。 「心配だからお前代わりについて行け、と言われました。」 久しぶりの諒らしい言葉は嬉しかったが、脳の奥のイライラにイライラして、 罪もない小野に麻也は言ってしまった。 「…布団一緒になるけど 大丈夫? 」 「あ、それは諒さんに許可取ってきます…」 うまい切り返しで小野が離れたのを見すまして、 麻也は鈴木をせかし、小野が戻る前にその場を立ち去った…

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