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第18章の73★ダイヤモンドと麻也王子

「いや、ね、ツアー中だと、レプリカとはいってもさ、 どっかに忘れてきたら嫌じゃん。 最近は衣装のために外すことも多いし…」 なるほどねと諒は答えると、 「今度のはプラチナ製だから、ついでに何かつける? ダイヤとかペリドットとか。」 麻也はその意味が分からなかったし、あまりいい考えとは思えなかったので、 「いや、それは別にいいんじゃない。本物に忠実にってことでさ。」 忠実にねえ…と言葉を引き取った諒はやや不満そうに見えたが、 麻也はせっかくのすっきりしたデザインになぜそんなものを足さなければいけないのか、 やっぱり理解できなかった。 そして二人してペンダントを外すと、諒が預かって三田の知り合いのジュエリー工房に依頼することになった。  二人でタクシーに乗り込んでから、麻也には諒の言いたかったことがようやくわかった気がした。 諒は出世した2人の証も、大事なペンダントにつけ加えたいということだったのだろう。 「…諒、さっきのペンダントの話なんだけどさ、 ジュエリーつけ足すのは次回、何かの記念の時にしない? 例えば東京ドームとかさ…」 それを聞いていた諒は前を向いたまま、気のない様子で、そうだね、とだけ答えてくれた。

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