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第7話

「……え」  いま涼介はなんと言っただろう。  心臓が竦みあがるのを感じて泉は息を飲む。   恐る恐る見ると涼介が頬杖をついて煙草に火をつけるところだった。 「いい人だよね。俺も先輩好き。面倒見がいいんだよね、あのひと。一見冷たそうだけど親身だし。弓道部のときも主将としてみんなから慕われてたんだよ」 「……そ、そうですね。すごくいい店長だと思います」  好き、が全部恋愛に結び付くものじゃない。そもそも同性なのだから普通に考えてひととしてなのだ。  泉はそっと安堵のため息をついた。 「早川くん、連絡先交換しない?」 「……へ」  またしても涼介の発言は唐突だ。連絡先って俺の? と不思議に思いながらもとりあえずスマホを取り出す。 「今日初対面でまだ出会って数時間だけど、早川くんとは仲良くなれそうな気がするんだ。仕事のこととか俺でよければいつでも相談のってあげられるしね。あとはまぁ会社におじさんばかりだから、若い子の知り合いが欲しいって感じかなー」  あっけらかんとした涼介にさっきまでの不安は薄れて泉は笑顔を浮かべていた。  確かに涼介とは仲良くなれそうな気がする。気さくで話しやすいし年上の知り合いはあまりいないから社交辞令だとしても親しくしてもらえるのは嬉しい。 「俺でよければ、ぜひ」  連絡先を交換しあう。それから涼介と好きな音楽の話などをしていたところで一貴が戻ってきた。 「悪いな。と、もうすぐ12時か。そろそろ帰るか。八木、明日は仕事だろ」  いつの間にかそんな時間になってたのか。泉は時計を見て驚く。泉と一貴は明日休みだが八木が仕事ならもう解散がいいだろう。終電にもギリギリ間に合う。 「そうですね。じゃあ今日は帰りますか。また今度ゆっくり飲みにでも行きましょう」 「ああ」 「早川くんも、ね」 「はい」  会計は一貴が支払い、涼介と泉は「ごちになります!」と冷えた夜の空気の中にお礼を響かせた。次は八木払いだから、と一貴の冗談に笑いながらその場はお開きになった。  二人と別れ駅へと早歩きで向かい終電に乗り込んでホッと一息つく。電車の揺れに欠伸が出ながら、思いがけない今日の夕食に頬が緩んだ。  一貴とごはんが食べれるなんて幸せな時間だったな。  いろんな表情の一貴を思い浮かべているとスマホが振動し、メッセージを受信した。  それは涼介からで、意外にも可愛いスタンプで「よろしく、またね」と告げるものだった。  ふっと口元を緩めて泉も同じように好きな漫画のキャラクターのスタンプを送り返す。  涼介とは仲良くなれそうだし、一貴とはまた少しだけだが距離が近づいた。ほんのささやかなことだがとてもいい一日になったことに泉は嬉しさに頰を緩ませたのだった。 ***

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