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第31話
泉に手を離させて、二本を一緒にして扱き出す。手とは違う刺激だ。互いから溢れるぬるりとしたもので滑りよくなりこすれあって相手の熱が伝わってくる。
息を荒くさせ泉は自分のと涼介のがぴったりと密着して摩擦しあってるのを見つめる。目が離せなくて気持ちよくて腰が疼いて揺れてしまう。
「気持ちいい、よね?」
熱を帯びた息を吐き出しながら涼介が泉の口元で囁く。頷くまでもなく、頷けもせずに涼介に視線を向けると、視線が絡まって直感する。キス、される、と思ったときにはキスされて舌が泉の咥内で蠢く。
気持ちよすぎて意味がわからない。
わからなくてただ翻弄されてキスに応えてしまう。身体が快感だけを追い求めてしまう。
「……ンッ」
追い求めながらあっという間に弾けそうな感覚が全身を駆け抜けて涼介の腕をつかむと、察したようにふたつのモノを扱くスピードが速まった。
「っ……ぁ」
咥内で舌が絡み合って唾液がまじりあう音が脳内に響く。どちらのものかわからない吐息も、下肢から送られる振動も全部脳内に送り込まれて蔓延してぎゅっと目をつぶった瞬間どろりと欲が吐き出された。
腰が痙攣する。ぞくぞくとした快感と解放感。
音を立てて離れていく涼介の唇を呆然と見つめながら吐精の余韻に浸る。だけどその中で違和感があった。
「最近してなかった?」
涼介がテーブル下に置いていたティッシュを取り掌で受け止めたらしい白濁をふき取っている。それがなにか、なんて言わずもがな。
「っ、あ、ご、ごめんなさいっ!」
「謝る必要ないよ。気持ちよくてイったんだし。それにまだ足りないよね」
丸めたティッシュを部屋の隅のゴミ箱へあっさりと投げ入れた涼介がピンと指先ではじいたのは泉の半身だ。
「っ……」
そこで泉は違和感の正体に気づいた。いやわかってはいたけれどいままでになかったから、まさか、と思っていたのだ。さっき出したのに、勃ったままだなんてことは。
「あ、え……っ」
なんで勃ってるんだ?! だって、出たよな。
狼狽えて顔を背けると耳に楽しそうな笑い声が響いてきた。
「ほんと可愛いー泉くん」
ひどい羞恥に襲われる。恐ろしく早かった。いままで自慰をしてきた中で一番だ。恥ずかしいし恥ずかしいしまだ勃ってるしで恥ずかしくて顔を俯かせると小さな電子音がピッと響いて部屋の電気が消えた。
完全に真っ暗なわけではない。カーテンは開けてあったせいで外の光が差し込んでいる。月がちょうど見えて、部屋の中はお互いの顔を判別できる程度の暗さだ。
「あ、の……涼介さん」
流石にまずい状況のような気がする。不安が一気に増して声が小さくなってしまう。
「抜き合いっこくらいできればなーって思ってたんだけど、泉くんが可愛すぎるからもうちょっと味見したくなっちゃったんだけど、いい?」
「……」
頷けるわけがなく呆気に取られていると刺激が送られてきて眉を寄せる。一度欲を吐き出した半身は敏感で、またあっさりと意識が持っていかれそうだ。
「で、電気……」
「え、泉くんって明るいほうが燃えるタイプ?」
「……っ、違いますよっ! な、なんで消して……」
「暗いほうが雰囲気でない? エッチなことしてる、って」
「……は、っわ」
さっきまでと同じように泉と涼介のモノが擦れあう中、顔を近づけてきた涼介がキスではなく首筋に顔を埋めてきた。同時にもう片方の涼介の手が服の中へ滑り込んできて背を撫でる。
「っん……涼介さ、んっ……やめっ」
「なんで? もういまさらじゃない? 泉くん気持ちいいこと、キライじゃないよね?」
イっちゃったし、と涼介が耳朶を噛んでくる。
軽い痛みと、そのまま耳に吹きかかる吐息、そして耳孔を這う舌。服の中で移動する手は前へきて胸の頂を摘んでくる。
一気に押し寄せる初めての刺激。
「……涼……っ」
いまさら、だけど、でも、だけど。
また気持ちよさに意識が流されていく。これ以上はと抗いたいのに力が入らない。
ダメ押しとばかりに言葉を塞ぐようにキスされると思考は完全に停止して与えられる快感を求めてしまう。
器用に動く涼介の指。真っ平らな胸を執拗に弄ってくる。ムズムズとした刺激ははっきりと気持ちいいと言えないけど気持ち悪くはないから、気持ちいいのだ。
吐精しても萎えることがなかった半身からトロトロと先走りが溢れているのを感じる。重なった涼介の半身からもまた同じ印象を受け、さっきよりもさらに熱く脈動しているのがわかる。
その伝わってくる熱にも煽られて泉は涼介の首に手を回ししがみついた。
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