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第30話
「つまんないね」
「……しょうがないじゃないですか」
恋愛経験もない、性にまったく興味がなかったわけじゃないが、性欲を突き詰めていくのも怖かったのだ。
不貞腐れるように泉はうつむくときつく抱きしめられた。
「かわいい!」
「は……?」
「やっぱいろいろ教えてあげたくなるよね。ね、抜き合いっこしよっか? 人の手でしてもらうのって、すごく気持ちいいよ?」
キスだってよかったよね、と囁かれて戸惑う。
確かに気持ちよくて流されてしまっている。でも――抜き合いっこって、と泉は首を振った。
「りょ、涼介さん、無理……っ」
「えー、でも俺も勃ってるし」
手を掴まれたと思うと涼介の下肢に持っていかれた。指に触れる硬さ。同じ男でそれがなにかわからないはずもないし、一気に生々しさが押し寄せて喉が鳴った。
「……っ」
「キスと同じようなものだよ。一緒に擦りあうってだけ」
「……一緒じゃな、い、でしょ」
声がかすれてしまう。どうしてこんなところまで流されてしまったのかわからない。やっぱり酔いもあるのか。
いまひしひしと身に迫って感じるのはこの空気から抜け出せない予感。
「一緒一緒」
軽い口調で笑う涼介に何も言い返すことはできずに、泉は手に感じる硬さに妙な感覚を覚えた。
「窮屈だから出していい?」
「えっ」
「泉くんとえっろいキスしてムラムラしてるし。まさかトイレでひとりで抜いてこいなんて言わないよね?」
「……」
「それに一緒に出しちゃえば別に平気だよ。男同士だし」
「……」
男同士――。いやだけど俺も涼介さんも男同士がいいんだから、これ以上するのはよくないんじゃないか。
溶けかけていた理性が頭の中で言ってくる。
でも、とそれに反するのは身体だった。
泉がなにも言えないでいる間に涼介がわずかに離れると腰を浮かせてそれを取り出す。
見慣れてるけど違う。熱く猛った涼介の半身に目が釘付けになって、ごくりとつばを飲み込んだ。
反り返った涼介のモノ。それに泉の目は釘付けになった。
自分にも同じモノがついているというのに、まじまじと見てしまう。
「そんな珍しい? 見てるだけじゃなくて触って欲しいな」
涼介が泉の手を取り勃ち上がったソレに触れさせる。ぬるっとした熱い感触に心臓がざわめく。
その状態が興奮からくるものだとわかりきったことで、同じ男なのだからこれからどうしたいかどう発散させるかもわかりきったことだ。
促さられるままに涼介の半身を握り、掌から伝わる熱と脈動。
「手、動かして?」
囁かれて泉はおずおずと握り締めたものを上下に擦る。
はぁ、と涼介の吐息がこぼれて、それにどきりとしながらも擦る手に少し力を加えた。ぬるりと先から溢れてくるもの。
じっと先端を見つめてしまう。
「泉くん、触っていい?」
「へ……」
今さら我に返って泉は目を白黒させて涼介のモノから手を離した。
「えー、なんで手離すの」
「い、いやだって……」
「ほら、泉くんも」
「だ、ダメですっ」
「そんなこと言って俺よりガチガチなってるくせに。そのまましてると下着汚れちゃうよ」
「っ……」
涼介が泉のズボンからベルトを緩め、そして前をくつろがせる。そして涼介の言う通りに涼介以上に反り返ったモノが空気にさらされた。
「……ひゃっ、まっ!」
手際の良さに唖然としてるうちに涼介に握られる。指を輪っかにして緩く擦り上げられる。
自慰と同じで違う。強い刺激に腰が震えた。
「人に触られるのって気持ちいいよね?」
ヤバい。
出そう。
一人でするとは作業のようなものだから、なかなかイケないときもある。でもいまはあっという間に果てそうで泉は唇を震わせ荒い息をこぼした。
「俺のも触って?」
涼介のモノをまた握られせられる。抵抗はできず、頭の中が真っ白になって、気づけば涼介と同じように手を動かしていた。
涼介が泉の腰を引き寄せる。涼介の脚の上に跨らせられ互いの半身が触れ合って泉はきつく唇を噛み締めた。
「ね、泉くん、いま興奮してる、よね?」
上目遣いに涼介が泉を見上げ艶っぽい笑みを浮かべる。
「それってさ、欲情してるってこと、だよ。俺は泉くんに欲情して、泉くんは俺に欲情してる」
涼介は言いながら半身同士を擦り合わせた。
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