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プロローグ
世界が逆さまに見えた
頭を下にして落ちていく体、この先に待ち受けるものなんて考えなくてもわかる
風を切る音が耳元でごうごうと鳴っている
時間が止まる筈がないのに、やけにゆっくりに感じて何もかもを考えるのには余裕があった
首を少し曲げれば落ちていく自分に手を伸ばす君が見えた
その目には絶望の色が映っていた、これは自分が招いた結果なのに
泣かないで
ここで初めて僕は後悔した。
何の意味も目的すら見いだせない人生だったけど、君を泣かせることはしたくなかったのだと気がついた
出来ることなら彼には謝りたい
「ぁ………」
時間は止まらない、ゆっくりに感じた時間は思ったよりも短く、逆さまに落ちた体は耳を塞ぎたくなるような音を立て、意識は黒く染まった
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