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第一章 † ①へっぽこ刑事カルヴィンがゆく!

『今年に入って三人目の犠牲者か。白骨化遺体が見つかる』  カルヴィン・ゲリーは貴族たちの間で最も人気があるゴシップ誌、”CLOWN TIMES(道化師の時間)”の見出しに注目すると眉間に深い皺を刻んだ。  これは早朝から見る内容ではない。  事件は大都会ニューヨーク片隅にある小さな町で起こっていた。  犠牲者はいずれも女性で、失踪してから数週間後に白骨化した遺体で発見されるのだ。  発見現場はどれもこの近くだ。自分の目と鼻の先で起きた事件だと思うと怒りが込み上げてくる。  カルヴィンは手にしたコーヒーカップを叩き付けるようにしてテーブルに置くと、きつく拳を握り締めた。  カルヴィンがこの得体の知れない事件にこうものめり込むには理由があった。  それは八年前、フレズリー・グルモン侯爵の愛娘が十六の誕生日を迎え、パーティーが開かれた時のことだ。  当時十七歳だったカルヴィンの姉、クリスティーナが招待を受け、参加したのが悪夢の始まりだ。以降、姉からの連絡が一切途絶え、一週間後ののちに白骨化した遺体となって家族の前に姿を現した。  当然、僅か数週間で死体が白骨化する筈がない。  ともあれ、警察は犯人特定のため、姉に恨みを抱く人物がいなかったかを探ったが、誰もが羨む美貌を持っていながらも快活で人当たりの良い彼女を悪く言う人物は誰もいなかった。  怨恨によるものではないとすると、無差別殺人の可能性がある。  突然の失踪と謎の白骨化した遺体。

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