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第三章 † ④潜入捜査開始! の筈が……。

 それだけでは飽きたらず、掴みかかってくる始末だ。  おかげでカルヴィンはあっという間に注目を浴びてしまった。これでは張り込みどころではない。  そしてさらに運が悪いことに、クリフォードが今になって姿を現した。  クリフォード・ウォルターは貴族としての資質に秀でている。彼は一般人とは違う雰囲気を纏っていた。  彼が姿を現した、たったそれだけで賭博クラブの空気が研ぎ澄まされる。それはまるで純粋な水でできた氷のように静かで洗練された美がある。この地に舞い降りた漆黒の堕天使――そう呼ぶに相応しい。  カルヴィンはキリストを崇拝してはいない。だからこれまで悪魔の存在を信じていなかったわけだが、ここへきて考えを改めた。  もし、彼が悪魔だとするならば。女性を誘惑するのもわけはない、と――。  果たして自分は悪魔と戦えるだろうか。  緊張が一気に高まるカルヴィンの口内には唾が溜まる。  眉一つ動かさない彼には感情がないのか。バーカウンターで騒いでいるこちらを視界に入れると、すらりと伸びた長い足を向けた。  満月のように青白い目がカルヴィンを射貫く。  ここで彼に捕まっては元も子もない。一刻も早くここから立ち去るべきだと本能が告げている。けれどもクリフォードから目を離すことができない。  カルヴィンは口内に溜まった唾を飲み込んだ。  クリフォードはやがてこちら側へやって来ると、カルヴィンを怒鳴り散らしている男の首根っこを軽々と持ち上げ、外へ放り出した。

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