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第三章 † ③潜入捜査開始! の筈が……。

 麦畑を思わせるような金髪に二重の大きな翡翠の目。日焼け知らずの極め細やかな透き通った肌と華奢な腰からすらりと伸びた肢体。その容姿は姉に劣らずで、幼い頃から女性より男性に言い寄られることが多かった。  しかし今のカルヴィンにとって、この状況は非情に拙い。  自分はここで潜入捜査をしている。下手に目立ってしまえばクリフォードに気取られる可能性がある。なにせカルヴィンは樹海で彼と出会っている。当然顔も見られただろうし、自分が何者であるかも知っている。  いや、しかし彼は大富豪だ。たかが一般庶民一人で、しかも夜の樹海で出会った男の顔をわざわざ記憶しているだろうか。  カルヴィンは後込みしてしまう自分に叱咤すると気を取り直した。  すると顔を火照らせた恰幅のいい中年紳士がカルヴィンに話しかけてきた。男はあたかも自分の所有物であるかように、馴れ馴れしく腕を回してくる。  風船の如く膨らんだ腹の殆どが酒だろう、大きな口から吐き出される息はねっとりとした熱を持ち、酒臭いアルコールがぷんと匂う。  細く、しなやかな肢体を舐め回すように見つめてくる視線も気持ち悪い。  こういう輩は相手にしない方が得策だ。  カルヴィンは未だ賭博クラブのオーナーを見つけられず、焦っていた。  言い寄ってくる男に見向きもしないまま、背後に回った手を振り払うと、ご満悦だった男の態度は一変した。  男の火照った顔は赤黒い血色になり、先ほどの甘い囁きとは打って変わって汚い言葉でカルヴィンを罵りはじめる。
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