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第三章 † ②潜入捜査開始! の筈が……。
いずれにせよ、非会員制のおかげで身分証提示しなくとも容易に潜入できるということだ。
クラブは深夜遅くから開店し、早朝に閉店する。生活週間は朝型から夜型に逆転していた。
店内はさすが経営者が大富豪として有名なだけはある。
頭上には巨大なシャンデリアが飾られ、ところ狭しとカジノやダーツ。それにビリヤードの台が並ぶ。それから少し離れたテーブルには小腹が空いた時にいつでも啄むことができるよう、キッシュやサラダバーが設けられ、バーカウンターではそれこそ滅多に味わえない高価なワインが用意してあった。
その日もカルヴィンはいつものようにバーカウンターでワインを嗜んでいた。真面目で堅実なカルヴィンには賭け事は不向きだ。しかも一般人の自分ではこのクラブに入るのがやっとで、散財するほどの金がない。
だから大人しくバーカウンターの椅子に座り、こうして毎夜、一般の客に扮してグラスを傾ける。
さて、クリフォードはいったいどこにいるのだろうか。カルヴィンが周囲を目ざとく確認していく中、バーカウンターのこちら側に客たちの視線が集まりつつあった。
賭博クラブは紳士の憩いの場だ。よって、視線を向けてくるのも当然男性だ。
彼らは皆、酒に酔っているのだろう。頬を赤らめ、熱が隠った視線を寄越してくる。カルヴィンに話しかけるべきかどうか迷っているようだ。
それというのもすべて、この中性的な顔立ちが悪い。
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