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3、顔合わせ
珠生と湊は、一旦帰宅してから地下鉄で合流し、ホテルへと向かった。
いつもの部屋のインターホンを鳴らすと、亜樹が顔を出した。先に着いていたらしい。
「天道さん、早いね」
と、珠生が言うと、「まぁね」とだけ亜樹は返事をした。
「お、深春も」
「おう、一緒に来たからな」
と、深春はすでにソファにふんぞり返って座っている。亜樹はそんな深春の頭をべし、と叩きながら、そのとなりに座る。
「いってぇ!」
「幅取り過ぎやねん、どいて」
「へいへい……」
深春はちんまりと座り直し、向かいに座る湊と珠生を見た。
「どうだ、大学は。いい女いたか?」
と、深春がニヤニヤしながらそんなことを尋ねてくるので、珠生と湊は苦笑した。亜樹はちらりと二人を見て、つんとそっぽを向く。
「いい女なんかいないよ。一方的に来られて困ってるだけ」
と、珠生が言うと、深春は楽しげに笑った。
「さっすが、言うことが違うわ」
「調子のりすぎやろ、スケベ」
と、亜樹。
「乗ってないよ。乗れるなら乗れたほうが楽だし」
と珠生は言い返す。
「天道は何学部やっけ」
と、早々にその言い合いを遮るべく、湊がそう言った。
「文学部」
「……の、何学科?」
「……幼児教育科」
「へっ!? 天道さんが!?」
と、珠生が思わず声を上げると、亜樹は面倒くさそうに珠生を睨む。
「悪い?」
「いや……ちょっと意外だなと」
「うっさいなぁ、なんでもいいやん!」
「お遊戯とかするの?」
「うるさい」
「聞いただけだろ」
また珠生と亜樹が喧嘩し始めた頃、またインターホンが鳴った。深春がドアを空けると、舜平と彰が入ってきた。
「おお、若者たちばかりじゃないか。あれ、どうやって入ったの?」
どさ、と彰は重たげな黒い革の鞄を床に置くと、皆を見回す。
「葉山さんがいたんやけど、迎えがあるって降りていかはってん。てか舜兄! 久しぶり!」
自分の背後へ回った舜平を見て、亜樹が身を乗り出して喜んでいる。舜平は笑って、そんな亜樹の頭を撫でた。
「おう、久しぶりやな」
「元気してたん?」
「いや、まぁ……ちょっと落ちたりもしたけど、まぁ今はこの通りや」
「ったく、心配させよって」
と、湊がやれやれと首を振る。
「すまんな」
「俺は一回会ってるもんね」
と、深春は誇らしげだ。舜平はソファの後ろから深春の頭も撫でると、「せやな、あんときはありがとうな」と言ってくりくりと撫で回す。
「珠生とは仲直りしてんの?」
と、湊が何も言わない珠生と舜平を見比べてそう言う。珠生は肩をすくめ、「まぁね」と言った。
「月末に河原でばったり会ってな。殴られかけたけど、まぁ許してもらえたわ」
と、舜平はからりと笑った。
「怖い怖い」
と、深春。
「まぁ良かったよ、これで少しはこちらも落ち着くさ」
と、湊と珠生のソファの後ろに立って背もたれに手をつき、彰はほっとしたように笑った。
「なんだかんだ、舜平がいないと皆元気が無いからなぁ」
と、彰が言うと、舜平は少し照れたように笑って、ジーパンのポケットに手を突っ込んだ。
「そうやで。沖野なんか超絶暗かってんで」
と、亜樹。
「そんなことないし」
「嘘つけ、俺は怖くて話しかけられへんかった」
と、湊。
「え、嘘だろ」
「ほんっと仲いいよな、二人」
と、かねてから珠生と舜平の関係を訝しんでいる深春は、からかうように二人を見比べる。
「もういいってば」
と、珠生は面倒くさそうため息をつく。
「さて……葉山さんたち、遅いな。迎えって業平様をかな」
と、彰。
「そうじゃないですか?」
と、亜樹。
「ずっと東京だったんでしょ?」
「うん。僕もなかなか連絡できなくて……」
と、彰がなにか言いかけた時、がちゃりとドアが開いた。
葉山に続いて入ってきた女の姿に、皆が一瞬でしんとなる。そして、その背後から見慣れた藤原の顔を認めると、皆の空気がまた緩んだ。
女は黒いスーツに身をまとっているが、葉山とは比べ物にならないほどの女の色香を漂わせていた。
高いヒールを履き、深いスリットの入ったタイトスカートから伸びるのは美脚。ジャケットからはちきれんばかりに存在を主張している大きな胸、そして大きく波打った焦げ茶色の長い髪と、かなり目を引く容姿だ。
気の強そうな大きな目をマスカラではっきりと際立たせ、きらきらとしたルージュを引いた唇に笑みを乗せて、若者を見下ろしている。
深春だけが、ごくりと唾を飲んでその巨乳を見つめている。
「……みんな揃ってるね。紹介しよう」
皆の呆けた表情を見て、藤原は苦笑しつつそう言った。女はつかつかとデスクの方へと歩みを進め、その前に立つと、くびれた腰に手を当てて名乗った。
「宮内庁特別警護担当課本部長の、常盤莉央 と申します。今後、私があなた方の指揮を執るので、よろしく」
「……な」
なおもぽかんとした若者たちであったが、彰だけはすぐにはっとして声を上げる。
「業平様、誰ですこの人は!? 指揮をとるって……一体……」
「まぁ落ち着きなさい、佐為」
「佐為? あなたが、佐為?」
莉央はつかつかと彰の前に歩み寄ると、ぐっと顔を近づけてふんふんと匂いを嗅いだ。彰は迷惑そうな顔をあからさまにし、やや身を引いた。
「なんです?」
「お久しぶりね、佐為。私を覚えていないの?」
「は? あなたなんか知りませんけど」
「あら、かつての戦友じゃない。薄情ね」
「え……?」
彰は小首を傾げる。そんな彰を見て、藤原は笑って言った。
「佐為、そいつは、詠子だ」
「え、詠子……さま?」
「ええっ!!!」
「何やと!!!」
珠生と舜平も、思わず声を上げていた。珠生は立ち上がって、しげしげとその気を探る。
藤原詠子は、常に黒装束に身を包み、男だてらに戦場にも駆けつける勇猛果敢な女だった。がっしりとした体格や、ややえらのはった我の強そうな顔立ちをしていた詠子は、実際我も強かったし力も強かった。
二年間の修行に訪れていた舜海に淡い恋心を抱いていた詠子は、夜顔の一件を手伝いにきた千珠と、しばしば舜海を取り合って火花を散らしたものであった。
しかし、今眼の前にいるこの女は、多少水商売風という印象は否めないが、かなりの美人である。いかにも男好きのしそうなプロポーションと、それを自分でも分かってやっているであろうそのファッションも、文句なく様になっている。
詠子の名を聞き、彰は何も言わなくなってしまった。
莉央は、立ち上がった珠生の顔をじっと見つめる。
「……あなたが千珠? あらまぁ、今世ではえらくおとなしそうな感じになったものね。まるで小動物だわ」
「詠子……いえ、常盤さんも……随分、派手にお水っぽくなられましたね」
ぴく、と莉央のこめかみに青筋が浮かぶ。珠生の淡々とした様子を見て取ると、莉央はさらにつっかかった。
「お水とはなによ、セクハラだわ。今世では美しく生まれついてしまったから、それを活かした格好をしているだけ。あなたは随分、地味〜に普通っぽくなったものね。あの派手派手しい銀色の髪はどうしたの?」
と、莉央は珠生の髪の毛を指先でくるくるとこねくり回し、挑発するようにフフンと笑った。
すると今度は珠生のこめかみに青筋が浮かぶ。
不遜な表情を浮かべている莉央を見て、珠生は敢えてにっこりと笑った。
「目立つ髪の毛はなくても、俺は今でも十分目立ってしょうがなくて、困ってるんですよね」
「ふーん、あ〜〜〜〜らそう、大変ね」
「そうなんです、大変なんですよねー」
「…………言っておくけど、今日からあたしがあんたの上司よ。あたしに逆らったり、生意気言ったりしないことね」
「俺はまだ公務員じゃないです、ただの善意の協力者ですよ。善良な市民である俺に、そんな口きいていいんですかね。パワハラだ」
「ぐんぬ……こんの生意気な……! やっぱりあんたは気に入らないわ!!」
「それはこっちの台詞ですけど」
「おい、やめろや。亜樹ちゃんや深春の前で……」
見かねて止めに入った舜平を、莉央はぎろりと睨みつけた。
ぎょっとして足を止めた舜平を見て、莉央はパチパチと目を見張る。
「あんた、舜海ね。本当に……霊気、取られたんだ」
「……あぁ、そうや」
「へぇ……あんたは変わらないわね」
と、莉央は急に優しい口調になると、懐かしげに舜平を見て微笑んだ。
手を伸ばし、美しい爪で彩られた指先でその頬に触れる。
「嬉しいわ♡ またこうして出会えるなんて♡」
「……そ、そうやな……」
「今も千珠に霊気を貪られているのかと思ってたけど、これならその心配も無さそうね」
と、莉央はぺたぺたと舜平の肩や腕に触れながら嬉しそうに微笑んでいる。今度はこっちに食われそうだと、舜平は少し青くなった。
「詠子、いい加減にしなさい」
見かねた藤原が、渋い顔で注意する。莉央は肩をすくめて、舜平から少し離れた。
「感動の再会を果たしたところで……本題に入らせてもらうよ」
と、藤原が一歩前に進み出た。珠生はちらりと莉央を見てから、鼻を鳴らして腰を下ろした。舜平はささっと莉央から距離を取り、再び亜樹と深春の後ろに立つ。
「さて、上に今回の顛末を話したよ。何の成果も挙げられず、挙句の果てに手がかりの一人を逃した責任をとって、私は降格処分となった」
「えっ……そんな」
それを一番気にしていた彰が、思わずなにか言いかけたが、葉山に目線で止められる。彰は痛ましげに目を落とした。
「そんな顔するな、佐為。私はむしろ、気が楽になったよ。これでちょこちょこ上から呼び出されて東京へ行く事も減るし、気楽だ」
「でも……」
「藤原さんの上って、誰なんだ? もっと偉い奴がいんの?」
と、深春。
「宮内庁長官と次長だよ。二人には霊力はないけど、この国の裏歴史については知っている」
「でもそんな奴らにさ、藤原さんのやってること分かんねぇだろ。降格処分なんて……」
と、深春が腹を立てているようだ。藤原は微笑んだ。
「ありがとう、私のために怒ってくれているんだね。お役所ってのはそういうものでね、成果が出ない、ミスをしたとなれば、そういう表立った処分は致し方ないことだ。しかしそれで、彼女が戻ってくる機会にもなった」
「私は三年間、イギリスにいたの。ケンブリッジ大で日本とイギリスの文化差異についての研究をしながら、夜な夜な悪魔祓いをしていたわ」
「ケンブリッジ大学? 悪魔祓い? ……すごい」
と、亜樹。
「驚いたわよ、まさかお父様に……藤原さんにこのポストを引き継げと言われるなんて、思ってなかったから」
「先輩や葉山さんがやればいいのに」
と、珠生が文句を言うと、莉央は珠生を睨んだ。
「佐為はまだ学生だし、葉山は荷が重いといってね。それに、そろそろ常盤くんを呼び戻すいい頃合いだと思っていたし」
「強いんですか? この人」
と、珠生は意地悪な口調になっているので、湊がそれをたしなめた。
「なんなら一回やる?」
と、ぴくぴくと美眉を揺らして莉央が挑発する。
「やめないか。まったく……。あぁ、常盤くんは強いよ。私と同じタイプの攻撃型の力を持っているし、知識も豊富だ。それに、私もいなくなるわけじゃないから」
藤原がそう言うと、皆がほっとしたように息をついた。莉央は肩をすくめて、「えらく若者に好かれているんですね」と藤原を見る。
「ありがたいことだよ。まぁ実際、日本での実戦は久しぶりな彼女だ、当面の指示は私が出すから。常盤くんは皆の力をよく見ておくように」
「あら、大丈夫よ。私は向こうでもかなり実戦経験積んだから問題ないわ。エクソシストに混じって、しょっちゅう悪魔祓いしてたんだから」
「エクソシスト……」
と、亜樹が目を瞬かせる。
「だからすぐに使ってもらって結構よ。それに、政治的な命令については私の指示を優先してもらいます」
「それもそうだな」
と、藤原はわが子を見るような目付きで頷く。
「まぁそういうことなんで……みんなとは仲良くして欲しい……んだがね」
藤原はちらりと珠生を見て、莉央を見た。珠生はつんとして、「業平様がそう命令されるなら、俺は逆らいません」と言った。
「そうかい? じゃあ努力してくれたまえ」
「はい」
「あら、素直。じゃあしっかり、私の言うこと聞きなさいね」
と、莉央はニヤリと笑った。
「……」
珠生は何も言わず、大きな瞳で莉央を見上げる。湊は見かねて、立ち上がった。
「お久しぶりです。忍頭 やった柊です。今は柏木湊と申します」
「あぁ、あのすらっとした忍のお方ね。現世でも変わらずイケメンだこと」
「はぁ、どうも。俺は霊力もないし、大してお役に立てへんかもしれんけど……」
「いいえ、あなたのことは藤原さんから聞いているわ。しっかり働いてもらうから覚悟しておきなさい」
「あ、はい……頑張ります。あ、ついでに紹介します。天道亜樹、厳島の巫女の血脈を継ぐ者です」
「はじめまして……」
莉央は興味津々な目付きで自分を見上げている亜樹に向かって微笑むと、スッと手を差し伸べて握手をした。
「こいつは、織部深春。あの……」
「知ってるわ、夜顔でしょ」
「……」
莉央の刺すような視線に、深春はばつが悪そうに目を伏せた。
操られていたとはいえ、夜顔は詠子の仲間を数人手にかけた張本人である。すっきりと受け入れられる名前ではない。
「でも……もう昔のこと。藤之助様がしっかりあなたを鍛え直したというし、医術を学んで多くの人を救ったと聞いているし」
「……まぁ、そうだけど」
と、深春。
「私は、過去のことは現世に持ち込みたくない主義なの。……だから忘れる努力はするわ」
「……」
しゅんとしている深春を見て、珠生は思わず立ち上がった。何か言ってやろうと口を開く珠生だが、深春は「何も言うな」とばかりに首を振っているのを見て、ぐっと言葉を飲み込む。
莉央もまた、人の上に立つものらしい威厳を見せ、強い瞳でじっと珠生を牽制しているようだった。
「まぁ、仲良くやりましょ。目的は一つなんだから」
「そう、水無瀬菊江の討伐。これに尽きる」
藤原はそう言って、立ったままの珠生と莉央の肩を叩いた。
「私たちは明日、能登組との会議がある。そこで進捗状況を確認する。その内容については、また追って連絡するよ」
「じゃあ明日、また集まりますか?」
と、彰。
「そうだなぁ……かなり遅くなると思うけど……」
「俺は大丈夫です」
と、珠生。
「俺も」
と、湊も頷く。
「うちも大丈夫です。深春もおるし」
と、亜樹はまだ萎れている深春の肩をふわりと抱いてそう言った。
「俺も、いいです」
と、舜平も頷いた。
「そうか、では……明日の二十二時ごろ。またここへ来てくれるかな?」
「分かりました」
皆がそれぞれに頷くのを見て、藤原は微笑んだ。
「常盤さんて、何歳なんですか」
と、場の空気がほどけたところで亜樹がそんなことを尋ねた。全員が気になっていたことであり、皆それぞれに違うことをしていても、耳だけはしっかりそちらを向いている。
「二十七よ。それがどうしたの?」
「三年イギリスって言ってはったから、どういう経歴なんかと思って」
と、亜樹は珍しく愛想良くそう言った。
「あぁ、私は東大を卒業して宮内庁に二十二歳で入庁、二年藤原さんの部下をしてから、三年イギリスへ出向って流れよ」
「じゃあその頃から、前世のお父さんってわかってたんですか?」
「先に気づいたのは藤原さんだったわね。まだ高校生の頃だったわ。それから、私も徐々に思い出して……そうしたら霊力も跳ね上がったものよ。まだ藤原さんも三十代前半くらいだったから、そりゃあもう素敵でさぁ。でもその頃はもう奥さんいたし、思い出してみたら前世のお父様じゃない? もう、危ない危ない」
「……常盤くん、何を言ってるんだ」
と、彰と話をしていた藤原が、耳ざとくその会話を聞きつけて制した。莉央は肩をすくめて笑うと、亜樹の方を向いて続ける。
「東京では主に皇居周辺を守護する仕事に回ったわ。あっちも結構出るのよねぇ」
「そうなんや」
と、亜樹は目を丸くしている。
莉央は一人がけのソファに脚を組んで、ゆったりと腰掛ける。
「ところであなた、今はなんて名前なの?」
と、莉央は帰り支度を始めている珠生に声をかけた。
「……沖野珠生といいます」
「ふうん、珠生くん、ね。舜海は?」
「相田舜平です」
と、舜平はどこか用心深い目つきをしながらそう言った。珠生の目を気にしているのである。
「佐為、あなたは?」
彰に向かって上から口調の人物が珍しく、皆が彰を見た。彰は微笑んで、「斎木彰といいます」と答えた。
「詠子様、まさかこういう形でまたお仕えすることになるとは、思っても見ませんでしたよ」
「お仕えなんて、やめてよ。それ昔も、あなたは風春さまの部下であって、私にとってはただの同僚だったじゃないの」
「風春さまの奥方様ですから、一緒ですよ」
「まぁ、それもそうかもね」
と、莉央は懐かしそうにそう言った。
「ね〜え、舜平くん、またゆっくり飲みに行きましょうよ」
莉央は艶やかに微笑むと、舜平に向かってそう言った。舜平は冷や汗を流しつつ「はぁ、じゃあみんなで行きましょね」とそつのないことを言った。
「そうね、お子様のいないところでゆっくり喋りたいわ」
「お子様って誰のことですか」
と、珠生が突っかかる。
「あら、あなたのこととは言ってないでしょ。かわいいかわいい未成年さん♡」
「……この」
「珠生、帰るぞ」
と、湊がぐいぐいと珠生の腕を引っ張っていく。莉央はひらひらと手を振って、皆を見送りながら笑っていた。
若者がいなくなり、藤原、葉山、莉央だけになると、三人は改めてルームサービスのコーヒーを注文し、めいめいソファに座った。
「葉山さんとは、東京の時以来ね。お世話になりました」
と、莉央。
「ええ。しかしあの頃から、あなたは強かったわよね〜」
と、葉山。
「あ、墨田は元気?」
「墨田は今は能登にいるの。明日の会議で会えるわよ」
葉山はそう言った後、少し笑った。
「きっと悔しがるでしょうね。同期入庁のあなたが本部長なんだから」
「本当ね〜! ただでさえ相当ライバル視されてたもの。あーあ、明日が楽しみ」
と、莉央は楽しげだ。
「まったく……お前は」
と、藤原は苦い顔だ。
「大丈夫大丈夫、仲良くやりますから」
莉央はソファの肘掛けに肘を乗せて頬杖をつき、にっこりと艶やかに笑った。
【ご参考までに】
常盤莉央の前世キャラ藤原詠子は、『異聞白鬼譚 第六幕ー陰陽師衆動乱ー』に主に登場します。
舜海をめぐり、千珠と熾烈な三角関係に……
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