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36、美味な男
「ぁ、あ、あっ、あんっ、ンっ、ぁ」
「珠生……お前、バック、好きやろ。めちゃ締まる……っ」
「ン、ぁ、あんっ、ん、はぁっ……」
「はぁ……めっちゃ気持ちええ、珠生……お前は……?」
後ろから激しく突き上げられ、珠生はたまらずソファの座面に顔を埋めていた。
淫らな水音とふたりの荒い息遣いだけが、リビングにこだましている。
気持ちよくて、気持ちよくて、全身が性感帯になってしまったような気分だった。濡れた肌がぶつかり合う音や、舜平の色香溢れる息遣い、そして結合部から漏れ出る淫らな音にさえ感じさせられて、珠生はただひたすらに腰を突き出し、舜平から与えられる責めに歓喜の声をあげるのだ。
「ぁ、ああっ……ん……っ、イイ……っ、いいよぉ……」
「は……っ……イキそ……。どうなってんねん、お前の身体……」
「ぁ、ああ、あ、ンっ、うっ……」
「ほんまに、吸い付いてくる。……熱くて、中でうねって……はぁっ……」
「だめ、おれ、あぁ、あ、またっ……いっちゃう……ン、んんっ……ん、ぁっ……」
中を擦られて達してからというもの、絶頂感が止まらない。溢れんばかりの快楽に理性を奪われ、珠生は涙を流しながら舜平の突き上げに嬌声をあげていた。珠生のゆるく立ち上がったペニスからは、絶えずとろとろと透明な体液が糸を引き、ついさっきまで舜平が来ていたシャツの上に、いやらしいシミを作っている。
「しゅん……ぁ、あん、も、だめっ……おれ……ぁ、ああ」
「この一週間してへんかったからか? 珠生、今日はえらい感じやすいやん」
「ぁあ、あっ……舜平、さん……っ……おれ、ぁ、ァっ……」
「かわいい……ほんまに。珠生……俺の、珠生……」
優しく囁かれながらも、下ではより一層激しく抽送され、珠生は背中をしならせながら高らかに鳴いた。腰を荒々しく掴まれて、飢えを満たすかのように激しく穿たれて、珠生は声を嗄らしながら善がり狂っていた。
「んっ……ン……」
やがて、舜平も珠生の中で達したらしい。根元まで深く嵌められたまま、最奥で受け止める舜平の精液の熱さに、珠生はまたぶるるっと身体を震わせた。舜平から与えられるものは、何もかもが珠生にとって悦びなのだ。
「ぁ……はぁっ……はぁっ……は……」
「ん……は……珠生……」
「いっぱい、でたね……」
「ん……。ほんまに、ゴムなしでよかったんか? お前の体……」
「いらない、ゴムなんて……。いっぱい、中で出して欲しいから」
「……お前はまたそういうことを」
自分の中から舜平が出て行ってしまうことが、途方もなく寂しいことに思える。珠生は、ジーパンを引き上げている舜平をのろのろと振り返り、力の入らない身体を舜平にもたせかけた。
珠生を力強く受け止めて、舜平はぎゅっと珠生を抱きしめた。いつしか胸の上までめくれ上がっていた珠生の長袖Tシャツを直してやりながら、舜平は満足げなため息をついている。
「俺、中出しされてもお腹痛くならないんだよね。むしろもっと飲ませて欲しいって感じで……」
「は、はぁ!? そうなんか!? どうなってんねんお前の腹は!」
「んー、栄養みたいなもんなんじゃない? 舜平さんの……ええと……その……た、体液……」
「素直に精液って言えばいいやん」
「う、うるさい」
珠生がむくれると、舜平は少し笑った。汗で冷えてきた珠生の太ももを、片手でゆっくりと撫でながら、舜平は珠生の背中を強く抱き寄せる。舜平の肉体は、今も昔も暖かい。珠生は舜平の肩口に頭を乗せ、目を閉じた。
「ねぇ……俺の身体、気持ちいい?」
「えっ? ……お、おう……めっちゃくちゃ、いい」
「そっか……。ふうん」
「なんや急に」
「いや……俺ばっか馬鹿みたいに喘いでさ、舜平さん、なかなかイかないから」
「だって、イキまくってるお前、めっちゃエロいんやもん。ついつい頑張ってまうねんな」
「……別に頑張んなくても。出してもすぐ、元気になるくせに」
「まぁ、そうやねんけど。……普段おとなしいお前が、あんなに気持ちよさそうに乱れまくってるとこ、ほんまめっちゃくちゃかわいいねん。途中でやめたくないやんか」
「……そういうもんなのかな」
そう言って、珠生は舜平の腕の中で顔を上げ、ほんのりと上気した舜平の顔を見上げた。いつ見ても、惚れ惚れするような整った顔立ちだ。知性の滲むきりりとした精悍な目元や、すっと通った高い鼻、少し赤みを帯びた形のいい唇をしげしげと見つめていると、ついついにやけてきてしまう。
「ふふっ」
「ん? 何をニタニタ笑ってんねん」
「ニタニタとか言うなよ」
「顔が緩んでるぞ。もっとエロいことしたいんか?」
「ゆ、ゆるんでなんかないですけど」
「一回風呂いこか。ソファのカバーも……洗った方が良さそうやし」
「それはまぁ、慣れてるから大丈夫だよ。……でも、シャワーは浴びたいね」
二人はどちらからともなく唇を寄せ、軽く戯れるようなキスを交わした。舜平の唾液も、精液も、汗も涙も、昔と変わらず、珠生にとっては蜜の味だ。積極的に舜平の口内に舌を挿し入れ、珠生は何度もなんども舜平とキスをした。
「……珠生……」
「ん……? ン……んっ……」
「そんな、マジなキスされると……風呂場までもたへん」
「……え?」
尻の下に、硬い感触がある。珠生はふふっと笑って腰を揺らし、舜平の首に腕を絡めたまま小首を傾げて微笑んだ。
「俺のことをエロいエロいって言うけどさ、舜平さんだってよっぽどエロい身体だよ」
「そうか?」
「そうだよ。……お前は本当に、美味だな」
「ん」
「美味な、男だ……」
千珠であったころの口癖を持ち出して、珠生はもう一度舜平にキスをした。甘い唾液を舌で舐め、たくましい身体にすりよって甘えていると、舜平の両手が珠生の腰を掴んだ。大きな手で包み込まれていると、自分の身体がひどく華奢で頼りないもののように思える。
「お前、だんだん千珠に似てきたな」
「似てきたって変じゃない? あれは俺だよ」
「んー、まぁそうやねんけどさ。ま、どっちも結局かわいいんやけどな」
「……またそういう気持ち悪いことを言う」
「気持ち悪いことはないやろ。かわいいもんはかわいい。千珠もあんなんやったけど、ヤってる時はめっちゃかわいかったしな」
「うわぁもうやめてよそういうこと言うの!」
「なんでやねん。かわいかったで? あんなに偉そうで傲慢でツンツンしとったのに、セックスの時はもう……あんあんかわいく泣いちゃって……」
「うわぁあああもうやめてってば!!!」
珠生が本気で恥ずかしがっているのを見て、舜平は楽しげに笑った。
二人きりの甘い夜は、のんびりと更けていくのであった。
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