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ミニリュウに出逢いました
ようこそとは言ってくれたが、神様は着いてきてはくれないらしい。
残念無念。
まぁ神様だから同行は無理か。
ドアの先は何処にでもありそうな質素な部屋に繋がっていた。
机・ベット・箪笥等最低限な物以外見当たらない。
ん?机の上に何かあるぞ。
気になり近付く。
見るとどうやら契約書みたいだ。
突然ピロンって音と共に目の前に現れた文字。
多分ゲームでいう選択肢・説明文・会話の類だろう。
【ようこそlacrimaへ。此処は貴方が居た地球とは別の世界になります。移住者登録をしますので書類の記入をお願いします】
見た事もない文字なのに何故か読めるし書ける。
コレが言語自由変換か。付与して貰って良かった。
スッゲェ便利だわコレ。
名前の欄には本名と此方での名前を記入する様になっていたので先程神様に言われた通りgranatoと書いた。
どうやら柘榴よりグラナートの方を重視するらしい。
違う名前使うとか余計ゲームっぽいな。
でもゲームと違い此処は現実世界の為ゲームオーバーになってもリセット出来ない。
最初はレベル1の最弱だし気を引き締めていこう。
異世界着いてスグ死亡とかシャレになんないしな。
書類記入が終わり、部屋から出ると
「おおぅっ」
沢山の人が居てビビった。
どうやら辿り着いたのはゲームでいう始まりの街みたいな所。
沢山の店があり、人々で賑わっている。
行き交う人々は自分同様平凡な容姿だらけなので此処には余り冒険者達は居ないのかもしれない。
取り敢えず食料・衣服・武器等生きるのに必要そうなのを調達しようと歩き出したが、ちょっと待て。
俺お金持ってんのか?
ステータスオープン、念じると出てきたステータス。
《グラナート(granato)》
種族 : 異世界人
状態 : 通常
ランク : ランク外
Lv : 1
HP : 10
MP : ∞
所持金 0コイン
レベル1なのは分かっていたが、HP低過ぎだろ。
攻撃されたら秒殺決定だ。
尚且つ所持金0って何コレ。
あと、ランクって何だ?どうやったら上がるんだ。
困った時は攻略本を読むに限る。
軽く念じると手の中に現れた本。
目を通すと、どうやらランクはギルドに登録すれば上がるらしい。
其所で仕事をするとレベルも上がるし所持金もGet出来る。
なら最初に向かうのは店ではなくギルドだな。
ギルドはまるで居酒屋みたいに賑わっていた。
飲食したり駄弁っている人達が沢山居る。
入口付近に受付があったのでまず先に其方に向かう。
書類に名前を書き、魔法等の属性を調べる為採血をされた。
結果はオールマイティ。火も水も風も何でも使えるらしい。
多分コレも神様が付与してくれたチート能力だろう。
便利だが生活費稼ぐ程度しか闘わないから余り必要性を感じない。
まぁ無いよりはあった方が素晴らしいが。
ギルド登録には30コイン必要だが、所持金がない人は最初だけ無償でお金を貸してくれるらしい。
で、仕事の報酬から返金する。
何ともありがたい話だ。
早速俺は借金をしてギルドに登録をした。
お金が無いと宿にも泊まれないし食事も出来ない。
仕方がないので俺は登録後スグに仕事を始めた。
最初はランク外なので完全に初心者向けしか出来ない。
ギルド内の清掃や雑用。
雑用やお手伝い等でレベルが上がるのか?って不安だったが何故かきちんとHPが20になっていた。
不思議だ。
必死に汗水垂らして働いたお陰で少しだが手に入った所持金。
借金を返した。
因みにギルド登録時に所持金が0だったり少ない人は俺以外にも沢山居るらしい。
宿代や食事代にあり付けない人の為、無償でギルド内の一室で雑魚寝だが休ませてくれるし、食事も与えてくれる。
所持金を増やす迄暫くは此処でお世話になる事にした。
因みに入浴は別料金なので洗浄魔法を教えて貰い身体を綺麗にした。
洗浄と念じるか声に出すと身体や身に付けている物が全て綺麗になるのだが、やはりゆっくりお風呂に浸かりたい。
早くお金を貯めて入浴しよう。
ランクがランク外から一番下だがFになった為、薬草の採取が可能になった。
漸く一歩前進だ。
張り切ってフィールドに足を向けた。
無数の草花があるが、触れるとソレが何か文字で表現される。
鑑定機能も付与されてるとか本当に感謝しかない。
取り敢えず手当り次第に使えそうなのは全てアイテムボックスに収納し、ギルドに届けた。
そんな事を繰り返しているウチにレベルは5になった。
相変わらずHPは低いが、別に強いモンスターと闘いたいとか熱い性格してないので気にしない。
今日も気楽に行きますか。軽い気持ちでいつもとは違う場所の薬草採取の仕事を選んだ。
毎日来ていたのはギルドの後ろにある森。
モンスター居ないし草花多いし、採取には最適だ。
だが、たまには違う所にも行ってみたい。
好奇心で少し離れた場所にある森に向かった。
場所が変われば採れる物も変わるらしい。
いつもとは違う薬草や木の実が沢山ある。
夢中になり採取していると、どうやら森の奥迄入ってしまった様だ。
迷子になる前に帰るかと採取を中断すると
「ん?」
何かを発見した。
白銀に近い薄い水色の小さな物体が丸まっている。
近付きよく見てみると
「何コレ。スッゴイ可愛い」
有り得ない位可愛いミニリュウが行き倒れていた。
ドラゴンの赤ちゃんだろうか。
背中に生えている小さな羽が何とも可愛らしい。
コレといった外傷はないみたいだが、息が弱い。
取り敢えず
「ホイ〇」
唱えてみたが、余り効果はない様だ。
レベルが低いから効果が弱いらしい。
なら沢山使えば良い。
どうせMP∞なんだ。
途中で魔力が尽きる事はない。
「ベホ〇ズン」
やはり低レベルのせいで効きが悪い。
だが諦めずに繰り返していたらいつの間にかミニリュウは意識を取り戻した。
ぱっちり開いた大きな瞳はキラキラ透き通っていて宝石みたいだ。
小さな羽でパタパタ浮かぶ姿はもう、可愛いとしか言いようがない。
ヤバい、メチャクチャ可愛い。
何この子。ペットにしたい。
スッゲェ飼いたい。
そう願ったからか
【仲間にしますか?】
選択肢が現れた。
勿論迷わず【はい】だ。
【いいえ】は有り得ない。
だが、
【本当に仲間にしますか?一度仲間にするとドチラかが死ぬか、教会で正式な手続きをして違約金を払わないと解除出来ません。後悔しませんか?本当の本当に宜しいですか?】
何とも不思議な事を聞かれた。
何故そんなに念を押すのか。
どう見ても可愛らしいミニリュウじゃないか。
一目惚れしたし仲間に出来るなら悩む理由なんて一切ない。
選択肢の【仲間にする】を選んだ。
途端【グレイシアを仲間にしました】文字が現れた。
どうやらミニリュウには名前があるらしい。
「はじめましてグレイシア。俺の名前はグラナート 。これから宜しくな」
なでなで頭を撫でると
「はっ!?ぇっ、えっ、ちょっ、嘘だろぉ!?!?」
突然ミニリュウが眩しく光り、人間の姿になった。
「はじめまして、グラナート。私はグレイシア(gracia)。氷属性のドラゴンで代々魔王の付き人兼先生をしております。この度はMP不足で回復中の所を助けて頂き誠にありがとうございました。私を仲間にして下さりありがとうございます。これから宜しく御願い致します」
メチャクチャ可愛いミニリュウは魔王の付き人ドラゴンでした。
尚且つ有り得ない位美形だし、この人絶対レベル高い。
ヤバいな。平和で平凡な人生を送る予定だったのに絶対仲間にしちゃダメな人仲間にしちゃったよ。
コレ面倒なのに巻き込まれるの必須じゃないか。
爽やかに微笑みながら差し出された手。
キラキラ輝く笑顔。
神々し過ぎる。
眩し過ぎて直視出来ねぇよ。
だが無視するのも気まずい。
仲間になったんだしさ。
そっと握手をすると、何故かその後手の甲に唇を落とされた。
王子か。
ツッコミを入れそうになったが、その場合姫は俺になってしまう。
グッと堪えて何も言わずに口を閉じた。
キラキライケメンに隣に立たれたら息苦しくて歩きづらい。
慣れる迄先程のミニリュウの姿になって貰った。
グレイシア曰く、ミニリュウになったのは初めてらしい。
いつもは人間の姿をしているが、ドラゴンの時はかなり大きいし見た目が少し怖い。
多分コレは神様が言っていた幼児向け仕様のせいに違いない。
幼児が迫力のあるドラゴン見たら怖くて泣いちゃうしトラウマ物だ。
って事は本当に俺の周囲のみモンスターは幼児向けにデフォルメされるらしい。
有難いが、怖い位見た目でレベルが判断出来ないな。
グレイシアが運良く穏やかな性格だったから良かった物の、凶暴だったり話が分からないモンスターだったら死亡フラグが立ってしまう。
まぁ、どうにかなるっしょ。
面倒事を回避していけば大丈夫な話だしさ。
って、グレイシア仲間にしちゃった時点でソレは避けられそうにない気がするけど。
ミニリュウに変身したグレイシアと共にギルドに帰る。
小さな身体がふわふわ浮かびながら移動する姿はもうほんっと有り得ない位可愛らしい。
メチャクチャ癒される。
上機嫌にカウンターに行くと
「なっ、何で伝説級のドラゴンがこんな姿で一緒に居るんですか?」
受付の人が目を見開き驚いていた。
どうやらこの世界でドラゴンは物凄く珍しい存在らしい。
数体しか存在しない上に人前に姿を現す事等滅多にないそうだ。
俺メチャクチャ運良いな。
その後グレイシアの力も借りて俺はレベル20になった。
お陰でランクもDになった。
所持金も良い感じに貯まったので、俺はギルドの仕事を休んで、少し自由に冒険してみる事にした。
ミニリュウになっても力は変わらないグレイシアは一緒に冒険していて頼もしい仲間だった。
だけどスッゴク気になる事がある。
魔王の付き人なのに俺に付きっきりで大丈夫なのか?
聞いたら絶対魔王城に行こうとか言われそうだから敢えて口にしないでおく。
面倒事は回避でいきたい。
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