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今日も世界は平和です
勇者との旅はモンスターとの闘いがメインな為、一気に俺のレベルは上がった。
武器で攻撃したり格闘するのは勇者と武闘家のガブリエルなので、必然的に俺は魔法ばかり使った。
MP∞だし魔法楽しいし、モンスター討伐後は必ず素材入るし良い事尽くめだ。
グレイシアは特にする事がないらしく、可愛らしいミニリュウの姿で俺の側をパタパタ小さな羽をはためかせながら見守っている。
ミニリュウは物凄く可愛いから俺の癒し担当だ。
レベルが上がるに連れて、俺の容姿にも変化が現れた。
唯の平凡な童顔から、綺麗な漆黒の髪と瞳を持つイケメンもどきになった。
自分で自分を褒めるのはナルシストになるから嫌なのだが、明らか地球に居た時より見た目が良くなった気がする。
レベルと魔力に比例して魅力が上がると聞いていたが、自分にも当て嵌るとは思いもしなかった。
なんか嬉しいけれど恥ずかしい。
調子に乗ってレベルアップばかりしていたら、ガブリエルより強くなってしまった。
レベルアップと同時に魔力も上がった為、魔法の威力や命中率も格段に上がった。
今では殆どの敵を魔法で倒している。
スッゲェ楽しい。
本当にゲームの世界みたいだ。
様々な種類のモンスターを倒しながら遂に辿り着いた魔王城。
遊び感覚でしていたからかあっという間だった気がする。
「ちょっとすみません」
ミニリュウから人間の姿に戻ったグレイシアは断りを入れると、スグ戻ってきますからと言い席を外した。
単独で魔王城に入って行ったグレイシア。
やはり付き人だし闘いにくいのかもしれない。
嫌ならこの仕事断っても良いんだぞ?
別に魔王に恨みなんてないし、目当ては生活費と報酬のみだしな。
数分後戻ってきたグレイシア。
側にはスッゴク綺麗な顔をした見知らぬ人が居た。
誰だろう?
見詰めているとポフンッ可愛らしい音と共に子犬が現れた。
恐る恐る近付き頭を撫でると、キューンキューン見上げながら鳴いた。
グハァッ!!!
打撃1億。
俺即死。
何コレ、可愛すぎる。
ポメラニアンの子犬みたいな姿で甘える様に鳴いて、指先を近付けるとペロペロ舐める。
うん、可愛い。
この子飼います。
チュッ、キスをするとポフンッ
「ん?んっ、んんんん……ん!?」
何故か人間にディープキスをされていた。
どうやらポメラニアンはグレイシアと一緒に来た人の変身した姿だったらしい。
で、キスで元に戻って何故か今俺と濃厚なキスをしている。
あの、俺コレファーストキスなんですがノーカウントで良いですよね?
初めてが見知らぬ人に奪われるとか嫌過ぎる。
抵抗すると、嫌がっているのに気付いてくれたグレイシアが俺からソイツを引き離してくれた。
が
「ふぁっ、んっ、んんん」
消毒ですとグレイシアからもキスをされた。
何コレ。俺日本帰りたい。
気を取り直してグレイシアに尋ねる。
「この人誰?」
「ディアベル(diavel)様。今の魔王です」
「あっ、はじめまして。魔王職をしているディアベルと言います。以後お見知りおきを」
…………………………はい?
余りにも普通に登場してきて普通に自己紹介した魔王。
全然怖く見えないし、悪そうな人にも見えない。
名刺渡されたけれど、コレ俺も渡さなきゃダメな流れ?
って、持ってないけどさ。
「君物凄く可愛いね。名前教えてくれない?」
全く普通の人と変わらなさ過ぎて毒気を抜かれた俺。
素直に名前を教えたら
「グラナート可愛い。好き」
何故か懐かれた。
えっ、何この展開?
俺魔王討伐に来たんだよな。
でもこの人別に討伐しなきゃいけない位凶悪な人に見えない。
寧ろ人畜無害そう。
変身後ポメラニアンだし、イヌ科のモンスターなのかもしれない。
まぁ幼児向け仕様でデフォルメされてるから元の姿分からないけど。
「あのぉ」
突然耳に入った小さな声。
あっ、勇者居たんだ。
ディアベルが強烈過ぎて忘れていました。
「俺達魔王を倒す為に此処に来たのですが、魔王って貴方ですか?」
うん、さっき自己紹介されたしそうだとおもうよ。
コクン。
ちょっ、声に出さずに頷くとか本当にこの人魔の頂点に君臨する存在?
一々仕草が可愛らしいんだが。
「俺を殺すの?」
いやぁ、なんかヤリづらいな。
「魔王討伐が俺達の任務だから討伐しなきゃいけないんだ」
「そっかぁ。なら倒された事にしてこの力グラナートにあげる」
はい?
言われた事が分からずキョトンとしていると再び合わされた唇。
甘くて痺れる様な電流が身体中を駆け巡る。
舌を入れられ絡め取られ、ぼぉーっとしている間に温かい何かが胎内に侵入してきた様な奇妙な感覚に襲われる。
ワケが分からずクラクラする。
でもスッゴクスッゴク気持ち良い。
おかしくなりそうだ。
唇が離された時にはトロンッ、俺は完全に蕩けきっていた。
「コレで能力は全て移したよ。俺は魔王の力を失ったから魔王討伐成功だね」
能力の授与。
今なんか聞き捨てならないセリフが耳に入ったぞ。
「俺グラナートに一目惚れした。グラナート好き。一緒に居る」
ポメラニアンの姿になったディアベルは殺人的な可愛さで俺の顔を舐め回す。
はち切れんばかりに尻尾振ってるし、ヤバいな可愛すぎる。
現状把握は全く出来てないが、取り敢えず俺達は一度魔王討伐の依頼を出していた城に赴く事にした。
其所で何故か俺は魔王を討伐した勇者として賞賛され、新たに魔王になったがどうする?と国王に問われた。
魔王ってモンスターを纏めたり悪い事したりするんだよな?
なんか面倒い。
闘うの嫌だから協定結んで仲良くしようって提案したら難なく受け入れられた。
因みに今の俺の容姿は魔王の力を貰ったせいで金髪碧眼の大人の色気溢れる美丈夫だ。
以前の面影0。
違和感半端無くて気持ち悪いって口にしたら国王が魔力制御装置をくれた。
お陰で黒髪黒目に戻れたのだが、魔王の力は譲渡するか死なない限り消えないらしい。
だけど、他の人に移って戦争になるのも嫌だし制御出来るのなら別に何も問題ない。
国王から沢山の報酬と魔王から魔王城を譲り受けた俺は住処も自由に使えるお金も獲得した。
好きに生きて良いって神様も言っていたし、以前中断した買い物の続きでもしよう。
「今日は何処に行きますか?」
「そうだな、折角だから美味しい物でも食べようか」
ミニリュウなグレイシア・ポメラニアンなディアベルと一緒に俺はご機嫌に魔王城を出た。
晴れ渡る空。
楽しそうに暮らす人間とモンスター。
今日も世界は平和です。
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