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そうだ、教会に行こう
住処を魔王城にしてから暫く経った。
魔王城にはMP回復の泉があり、グレイシアやディアベルは1日に1回其所に入る。
一応二人共自己修復&回復機能は持っているが、時間が掛かるらしい。
その点泉は入ると一瞬で回復するらしい。
便利だな。
一目惚れされてから、ディアベルには異常な位懐かれている。
容姿だけでなく性格も可愛いので、もうわんこにしか見えない。
グレイシアは魔王付き人兼先生なので、俺とディアベルに色々な事を教えてくれる。
言語自動変換のお陰で不自由はなかったのだが、きちんと1から教えて貰えるのは嬉しかった。
文字・この世界の常識や歴史・魔法の使い方・戦術等、今迄知らなかった事がグレイシアによって教えられていく。
学校の授業は難しくて退屈で苦痛でしかなかったのだが、流石代々魔王の先生。
物凄く分かりやすくて楽しい。
これなら良い感じに覚えられそうだ。
少し休んで良いですよ。そう言われてソファーに横たわると心地好い睡魔に襲われた。
すやぁ、眠りに身を委ねると
「お久しぶりにゃ」
神様の声がした。
目を開けると其所はいつか見たプラネタリウムの様な空間。
どうやら神様と逢う時の仕様みたいだ。
「暫く見にゃいウチに成長したね。見違えたよ」
制御装置で力を抑えているとはいえ、今の俺は平凡には見えない。
見た目でレベルが分かるのだから一目瞭然だろう。
「今日君に逢いに来たのは頼み事をする為にゃんだ。以前話した子作りの件は覚えているかい?君には人口不足解消の為此処で子供を産んで育てて欲しい」
あ~そう言えばそんな事聞いてたな。
完全に忘れていた。
「好きな人は出来たかにゃ?」
好きな人?
う~ん。可愛いペットみたいなのには出逢ったけれどそれは恋じゃないよな?
「人口不足解消の為、この世界では特別に重婚が許されているんだ。だから何人と子作りしても大丈夫だよ」
うん、ちょっと待て。
無理。
女性が居ないからこの世界って男しか存在しないんだよな。
男女間での事は保健体育で習ったから知ってるが同性間での事は全く知らない。
どうやってするんだ?
「本来は種族が違うと無理なんだけれど、君の場合は安産スキルがあるからどの種族との子作りも可能だよ」
それってつまりグレイシアやディアベルともOKって事か。
う~ん。
全く知らない奴とするよりはマシだけれど、やり方知らないし好き同士じゃないと魔石誕生しないんだよな。
なんか難しそうだ。
「取り敢えず一度教会に行ってみて?其所に行くと色々知識が得られるよ」
そう言うなり消えた神様。
いや、正確には
「おはようグラナート」
俺が起きただけだった。
久しぶりの再会は夢の中だったのか。
取り敢えず行ってみるか教会に。
「ねぇ今から教会に見学に行くけどどうする?」
2人に聞くと何故か二人共目をキラキラ輝かせながら
「行く」「行きます」
即答した。
モンスターって教会苦手そうなイメージあるのに違うんだな。
ミニリュウとポメラニアンを連れて教会に向かった。
「ようこそいらっしゃいませ。教会は初めてですか?」
聞かれ見学に来た事を告げると資料を渡された。
資料によると教会では主に、新しい命の創造・法的手続き・状態異常の回復・病気等の診察や手術や定期検診等をしているらしい。
回復魔法等の指導も行っているみたいで、まるで地球でいう産婦人科と病院と役場みたいな施設だ。
忙しそう。
衛生上ペットの同伴は禁止だったので、2人には人間になって貰い一緒に見学した。
「そういえば今日数件生命創造の予約が入っているんですが、折角なので見学されてはいかがでしょうか?」
神様にも言われたし、見ておいて損はないだろう。
邪魔にならない様に一般見学席に3人で座った。
予約の時間になり、2人の男性が神父の前に手を繋ぎ歩いて行く。
立ち止まり、神父が名前を聞くと二人共名前を告げる。
瓶に入った液体を2人同時に口に含み、神父が呪文を口にする。
ゆっくり飲み干したら向かい合いキスをする。
すると2人を明るい光が包み込む。
これで最初の儀式は終わりだ。
その後その日のウチに性行為をし、愛の結晶である魔石が誕生したら再び教会に来る。
丁度良い感じに次に訪れた2人は魔石を持って現れたので、今から生命の創造が見れそうだ。
魔石を神父に渡し、神父が確認する。
この時に愛が足りなかったらソレは唯の石ころで、愛が足りていたら生命が産まれる。
どうやらこの魔石はきちんと愛が満ち溢れていたらしい。
ふわふわのベビー布団を1人に渡した神父はその上に魔石を置いた。
呪文を告げ、2人が優しく魔石を撫でると柔らかな光が辺りを包み込み、その後はオギャァオギャァと赤ちゃんの声がした。
一瞬で魔石は赤ちゃんになり、ベビー布団の上で誕生の産声を上げていた。
凄い。
こうやって新しい生命が産まれるのか。
泣き疲れた赤ちゃんは布団の中で幸せそうに眠っている。
可愛いな。
「どうですか?貴方も欲しくなりませんでしたか?」
背後から聞かれた質問。
教会の方だ。
「まだ分かりませんが、新たな生命が誕生するのはとても素敵な事だと感じました」
「見学に来られた方々は皆満足して帰られるんですよ。是非次は貴方の幸せの為に訪れて下さいね。お待ちしております」
優しく声を掛けられて帰宅した。
「可愛かったね赤ちゃん」
帰宅するなり、ふわふわした気持ちで生命の誕生の瞬間を思い出す。
2人が待ち望んで産まれてきた新しい生命。
幸せに満ち溢れた空間が彼処にはあった。
「欲しくなりましたか?」
「う~ん。分からない」
赤ちゃんは欲しいが、育てる知識ないし不安だ。
「俺まだその、経験ないし」
「経験?」
「キスもその、2人が初めてだったし。そもそも男同士ってどうやって子作りするんだ?」
口にしてから数秒後、真っ赤になった俺。
何馬鹿正直に言って質問してんだよ。
童貞丸出しじゃないか。
恥ずかしい。
「ごめん。今言ったの忘れて?」
メチャクチャ恥ずかしくて顔を両手で隠したら
「分かりました。今から教えますね」
グレイシアがニッコリ微笑んだ。
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