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第2話
「君は大学付近の大きな交差点の真ん中で、急に倒れたそうで、原因は貧血でした。そこに鈴木さんが救急車を呼んでくれて君は今、病院のベッドの上だよ?」
「あの、本当にすいません、咄嗟の事で僕もあたふたして…」
「いやいや、救急車を呼んでくれて本当にありがとう。」
俺はどうやら貧血で倒れたらしいが…助けてくれたそこの男の人は鈴木さんと言うらしい。助けてくれたのになんで謝ってんだろ、ふふ。きっと優しい人なんだろうな。そんな事を思っていると、
「もう!本当に何やってんのよ!どうしても一人暮らしがしたいって言うからお母さんは…うぅっ、ちゃんと食べれてないんじゃないの?」
「貧血で倒れるとか…しかも交差点真ん中とかっ!ありえないし…っ馬鹿じゃん亜樹兄ぃ!」
泣きそうな顔で怒鳴っているのは亜衣(アイ)。俺の妹で高校3年生だ。
「おい、お前達何もそこまで言わなくてもいいだろう。いや、そのーごめんな鈴木くん、びっくりしただろう…ありがとう。本当にありがとう。」
父が鈴木さんにお礼を言うと
「あ、いえいえそんな」
と、俺の父さんに声を掛け、俺には「体調どう?」と聞いてきた。俺は迷惑をかけたことをまず謝った。
「あ、あの…鈴木さん?すみません、ありがとうございます…」
「え?俺は全然。気にしないで…貧血早く治るといいね!」
鈴木さんはそう言ってくれた。なんて優しい…母さんも亜衣も『一人暮らしは楽じゃないから__』とか『どーせすぐ帰ってくんでしょ!』とか言って反対してた…人様に迷惑かけたし、怒るよな!や、怒るのもわかるけどさ…
でもっ!でも俺は子どもじゃねぇし!もう20歳だぞ!一人暮らしくらい。
大学でもそれなりに成績は良いはず。バイトだって居酒屋では『亜樹はとても楽しそうにバイトするなぁ!俺も見ていて楽しいよ!』って店長の前田さんが!ほ、褒めてくれたし。俺はとても充実している!…彼女がいないだけだっ!…そして、童貞なだけだ(小声)。
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