光とも高野とも別れてから5分ほどで家についた。高校から自転車で20分という近さ、かつ俺でも余裕な偏差値ということで学校を選んだところもある。 「ただいまー……」 おかえり～、と自分で言ってみる。今日も母親は夜勤だから誰もいない、これもずっとのことだから何とも思わないし「ママがいない日も、ただいまって言っておうちに入るのよ」という言い付けがすっかり癖になっているから高校生になった今でもつい言ってしまう。 今日の夕飯はなににしようか、と考えながら冷蔵庫を開こうとするとスマホの通知音が響いた、高野からのメールだった。 さっき別れたばかりだったから少しびっくりしながら見てみると日曜の話だった 「そうか、約束」 壁にかけられたカレンダーを見ながら高野のことを思い出す あの顔なんだったんだろう、とか、写真上手いよな、とか、やっぱり…俺じゃないほうが良いと思うな とか。 光もなにか言いかけてやめるし、なんなんだろう。 日曜、俺は何時でも大丈夫 短く返信をして夕飯は何にしようかと再び冷蔵庫へと手を伸ばした。 ** side高野 まずい、まずい、 指田が彼女ほしいなんて聞いてない、焦って変なことを言ってしまった気がする ひかりちゃんに釘を刺されていたのに、指田はストレートだから、傷つくだけだからって 俺じゃダメなんだろうか、…ダメだよな わかってるんだけど、どうしても諦めつかないから「写真を撮らせてほしい」なんて言って近づいてしまった、 他の人を撮ればいいのに なんて言ってくる指田に押して押して次の約束も取り付けてしまったし 「あ そうだ、時間とかどうしよう」 そう思ってスマホを開くとそこには自分が撮った指田の写真があって 「…………うっ……わ、」 自分で設定しておいて自爆した。幸いあまり人がいなかったからよかったけど、これ変質者だよな。 自分の撮った写真を眺めて確信した ああやっぱり、思った通りだ 俺が一番綺麗に撮れるのはきっと指田だ。 「まだ振られてない、よし、がんばろ」 ぐっと気合いを入れるように携帯を握って、指田へのメールを打ち始めた。