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第5話

国王となって早、数十年。 「月出……あなたの望み通り、約束を果たしに来ましたよ」 あなたの言葉通り、誰にも負けぬほどの力を身につけました。 あなたは早くに儚くなって、この姿を見せることはかなわなかったけれど。 もう、誰にも邪魔はさせません。 “不浄の巫子”はその身に受けた不浄故に、死後身体を木乃伊とされて、土に還ることはかなわない。 神殿の奥深く、大切に安置されていることだけが、救い。 義務のように設けた我が子に地位を譲渡し、すべての手続きを終えた足で、あなたの身体を迎えに行く。 あれほど美しかった髪は艶を失い、年老いた私以上に干からびて固くなったその頬をなでる。 「迎えに来ました……兄上」 水分を失い軽くなった体は、衝撃で折れてしまう恐れがある。 細心の注意を払って抱き上げ、王の墓所へと向かう。 あなたの身体がこのまま土に還らず、わたしの身体が朽ち果ててしまうとしても。 それでも。 共に在りましょう。 人の世で禁忌とされたとしても、常世ではそうではありますまい。 在位最後の命として、自分の墓所を作らせた。 この年寄りがあなたの魂に追いつくのに、そうそう時間はかからない。 何を確認したくとも、ひと月は墓所の扉を閉ざすように命じておいた。 これからは二人だけで過ごせるのだ。 冷たく暗い、固い寝所へ、あなたと共に入る。 あなたの身体を抱いて、わたしは眠りにつきましょう。 <END>

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