5 / 5
第5話
国王となって早、数十年。
「月出……あなたの望み通り、約束を果たしに来ましたよ」
あなたの言葉通り、誰にも負けぬほどの力を身につけました。
あなたは早くに儚くなって、この姿を見せることはかなわなかったけれど。
もう、誰にも邪魔はさせません。
“不浄の巫子”はその身に受けた不浄故に、死後身体を木乃伊とされて、土に還ることはかなわない。
神殿の奥深く、大切に安置されていることだけが、救い。
義務のように設けた我が子に地位を譲渡し、すべての手続きを終えた足で、あなたの身体を迎えに行く。
あれほど美しかった髪は艶を失い、年老いた私以上に干からびて固くなったその頬をなでる。
「迎えに来ました……兄上」
水分を失い軽くなった体は、衝撃で折れてしまう恐れがある。
細心の注意を払って抱き上げ、王の墓所へと向かう。
あなたの身体がこのまま土に還らず、わたしの身体が朽ち果ててしまうとしても。
それでも。
共に在りましょう。
人の世で禁忌とされたとしても、常世ではそうではありますまい。
在位最後の命として、自分の墓所を作らせた。
この年寄りがあなたの魂に追いつくのに、そうそう時間はかからない。
何を確認したくとも、ひと月は墓所の扉を閉ざすように命じておいた。
これからは二人だけで過ごせるのだ。
冷たく暗い、固い寝所へ、あなたと共に入る。
あなたの身体を抱いて、わたしは眠りにつきましょう。
<END>
ともだちにシェアしよう!