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第4話

幼いころにこの館の建つ庭に迷い込んだ。 ちょうど、ひたちが老師の穢れを身に受けている時だった。 それから何度かここに忍び込んで、知った。 行為の意味を。 その存在を。 それでも魅かれたのだ。 知っていてなお、魅かれた。 ひたちを、この手にと望んだ。 ひたちを望むことが禁忌だと知ったのは、ごく最近のこと。 精進潔斎を守らねばならない、神殿の巫子だということはもちろんだった。 互いに男であるということもある。 しかしそれ以上に。 王家の血は濃すぎて。 こうして父王もわたしも、血縁に引かれてしまうが故に、濃すぎて子孫が残らないのだ。 だから、片親が同じ兄弟でさえも、男女かかわらず、思いを通わせることは禁忌とされている。 それでも、お互いに望んでしまった。 せめて一度でもいい、熱を分け合いたいと。 「御身が穢れ、この身にて浄化し奉る」 あれほどわたしが嫌がっても、ひたちが頑なに口にした言葉。 これは熱を分け合う行為ではないと。 睦みあっているわけではないと、誰かに知らしめるための言葉。 ただ、穢れを巫子に移す行為をしただけだと、言い聞かせるための。 身体を重ねることで、危うくなるわたしを守るための言葉。 「ひたち……お慕いしています。どうか、立派な国王となってください」 「ひたち……兄上……」 「そしていつの日か、あなたが力をつけたなら、わたしの願いを……わがままを、きいてください」 「必ず……お約束いたします」 寝台の外には決して聞こえない声で、ひたちが望みを口にする。 それは遠い先の、いつかの約束。 「常世へ下ったその時は、きっと離れずに……いつまでもどこまでも、あなたの……日立のおそばに、おいてください」

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