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第3話
何度熱を最奥へ放っただろう。
行為は飽くことなどなく続けられ、すでに日は陰った。
続けようと思うなら、まだ続けることができる。
けれどそれはこちらの事情で、あなたを思えばはばかられること。
打ち込んでいた楔を抜き去り、繋がりを解く。
くたりと力の抜けた身体が、寝台の上にうつぶせる。
その身体を、そっと腕の中へ収めた。
「大事ないですか?」
「……慣れておりますから」
身体をつなげたのに、一線を引いたようなつれない言葉に、遣る瀬無くなる。
「みこさま……ひたち…愛して」
「穢れを落としたならば、しばしのお別れです」
私の言葉を遮るように、静かな声で、けれどきっぱりと。
腕の中から声がする。
「何故?」
「お解りなのでしょう? ……みこさま、あなたはこの国を背負い立つお方」
「それならあなただって」
「わたしは、“不浄の子”です」
「それでも、あなただって父王さまのお子だ……兄上!」
「正妃さまのお子でいらっしゃる、あなたと同じではないのですよ」
「……兄上……ひたち」
「本当は、わかっているのでしょう? ひたち?」
ああ。
ああ、わかっているさ。
わかっていたとも。
同じように“みこ”と呼ばれ、同じ音の名を持つこの人は。
同じ父を持つ、兄だ。
父が姉である巫女姫に手をつけて、産ませた兄だ。
同父母の姉弟が両親の、異形の人。
“不浄の巫子”と呼ばれ、神職の穢れをこうして身体を重ねることで一身に集める人。
同じ“ひたち”の音をもつわたしの、兄。
兄は“不浄の巫子”月出。
わたしは“日嗣の御子”日立。
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